数学話

 「イズミの数学楽しみにしてます」的なメールをもらいました。ガンバリマス。

 第9巻を相変わらず書いてます。前にこの夏の目標とか書いたけど、全然公開できてないしね。今日はその言い訳。
 さしあたって第2章まで(極限と微分の計算まで)を公開したいと思ってたんだけど、予定外に内容が増えちゃって遅れてます。
 極限の部分では、「数列の極限(ε-N論法含む)」「関数の極限(ε-δ論法含む)」を書けばいいかなぁ、なんて思ってた。第2章でeの定義のために「単調有界数列の収束」を実数の連続性の公理として認めます、なんてことをちょちょっと書いて終わらせるつもりだった。
 その予定では、あと最大値・最小値の定理や平均値の定理の証明を書くぐらいで完成だったんだけど。

 急遽、コンパクト性についても書こうと思ったのです。コンパクトという性質は、位相空間といった新たな概念を勉強するきっかけ。実数の世界だけで議論するようなものではないのですが、そのスタートとしては面白い例だと思います。
 にも関わらず、理工学系の人にはあまり関係ないからと大抵の本では割愛されてしまいます。ちゃんとした数学の本なら必ず書いてある性質なのに(あるいは、位相空間論などを勉強し出してから学習するのが王道ですが)。
 イズミの数学は、ちゃんと数学科に進む人にも読んでもらえるような参考書にしたいので、この辺はきちんと取り扱いと思って、書くことにしました(自分の勉強にもなるし)。それでページ数にして10ページぐらい、時間にして1週間ぐらい時間がかかることに(汗

 さらに、コンパクト性のためにはハイネ=ボレルの被覆定理とかを勉強したいわけです。すると今度は開区間の集合とか考えたりしなくちゃいけません。その証明には区間縮小法とかが便利です。
 すると、今度は実数の連続性を「単調有界数列の収束」だけではすませなくなってしまいます。どうせ区間縮小法を紹介するなら、同値な命題をいくつか挙げてしまわないと気が済みません。実数の連続性を示す公理は基本的なものでも5~6個ありますからね。
 とりあえずこの同値な公理を書いていくのに1命題証明に1日取っても1週間かかるよ(汗

 すると、今度は「実数とは何か」ということを書き出さなくてはなりません。「実数は体を成す」ぐらいは割愛してもいいのかもしれませんが、肝心なのは「アルキメデスの原理」と呼ばれるものの存在です。アルキメデスの原理は実数に限らず有理数も持っている性質なのですが、これが実数の連続性の公理の同値性をいうためには必要になってくるのです。
 実数の連続性の基本的な公理は5~6個あるといったけど、アルキメデスの原理を含まないと同値にできない命題が含まれているのです。つまり、同値性を示す前にアルキメデスの原理を実数の公理だとして認めておかないと、同値性の証明に欠陥ができてしまうのです(有名な話ですが、「解析概論」の問題点とされているのはこの辺です)。
 アルキメデスの原理を含む実数の公理を書くために数日、それを含めた上で第1章全体の体裁を整えてスムーズな流れにするのに1週間ぐらい……。

 ──全部で結局1ヶ月だよ。

 というわけで、コンパクト性を書くためだけに、内容が篦棒に増えてしまいました。9月中に完成する気がしません。まぁ、ただサボって遅れているだけじゃないんだよ、っていうアピールです(汗