「ゴールデンスランバー」/伊坂幸太郎

 2008年本屋大賞受賞作の「ゴールデンスランバー」を読みました。図書館で予約していたこの本が、受賞直後に手に入ってなんてGood Timing!と思いながら読みました。

 さて、最近映画で見た「死神の精度」を見ていると、当時の伊坂作品は茶目っ気のある作品が多かったなぁと思い返しつつ、その後の作品、たとえば「魔王」や「砂漠」あたりは、政治や法律といったものに切り込んでいく感じがあって、今の伊坂幸太郎の世界観を物語るのには欠かせない要素だと思ってます。

 今回はケネディ暗殺事件をモチーフに、如何にメディアの力、思い込みの力が恐ろしいかということを伝えてくる。人はメディアや思い込みによって安心したり恐怖に落とし込まれたりする。何一つこの目で見て、知っていることはないのに、だ。
 誰かが殺されれば、犯人が誰かいればいい、という感覚。パズルのピースが当てはまればどれでもいいといった考え方がいつの間にか僕達を支配している。メディアに踊らされていることに気付いていないのだ。

 そんな大きな落とし穴に、改めて気付かせられる。これが最近の伊坂作品で思うことだ。そして、これらは現実のものになってきている気がしてしょうがない。現実の政治やメディアを改めて考え直すところに来ているのかもしれない。

「クジラの彼」/有川浩

 本書はなかなかの名作だと思う。身近じゃない自衛隊員やそれに関わる人が、どのような生活――主に恋愛やけど――を、どんな気持ちで送っているのか、そういうことに思いが巡る。
 あとがきにもあるけど、実際に数多くの取材をして、その結果自衛隊員も普通の人間、僕達と同じように楽しんだり苦しんだりしているんだという、そういう面がとてもよく表現されている。

 基本的に有川浩は甘々の恋愛小説が得意みたいなので、阪急電車の恋愛部分で心の琴線を振るわされた人は、是非読んでみて下さい。

「赤い指」/東野圭吾

 1つのテーマは高齢化社会と認知症。いや、そうではない。人間の弱さが作り出す犯罪とその隠蔽工作。そんなものでうまくいくわけがない。

 誰が犯人とかを当てるミステリではないので、ここから先はネタばれのような内容も入ります。

 大きな問題は人間の弱さ。主役となる家族は3人とも弱い。
 まず主人公の昭夫。一家の主でありながら、息子とも実母とも、妻とも向き合わない。最後にそれを象徴するようなどんでん返しがある。
 そして妻である八重子。息子が起こした犯罪を隠そうとする気持ちはわからなくもないが、それを人に押し付け自分では何もしない。夫を非難するシーンがあるが、読んでいるほうからはどちらも同じにしか見えない。
 そして息子直己。息子自体を描くシーンはあまりないが、このダメな親にこのダメな子供あり、といった感じで、最後にでてくる「あいつらが悪いんだ」というセリフに象徴されていて、結局この家族は他人の所為にすることしか頭にない。だから、実母である政恵に罪をなすりつけるのだ。それしかできないのである。

 普通に読むと、高齢者には高齢者なりの心や気持ちがある、それを覚えておかなければならない、といったあたりに最終的なテーマがあるようには思えるが、僕は“きちんと向き合うことの重要性”というところを挙げる。それは犯罪だろうと老人介護だろうと。
 最後におまけのようについているエピソード、「客観的に自分がしてあげたことはどうだったか」と思うようになるというところは、その向き合うことの重要性を理解している人が行える究極の行為の一例として挙げているんじゃないかなぁと思いました。

 「こいつらホントにダメなやつらだ」と思えるような構成、文章になっているのは、さすが東野圭吾だと思いました(笑

 こんなにいろいろ書いたけど、実際には星4つぐらい。若干ストーリーに薄っぺらさも感じるし。あと、読んでいると苛々したりムカムカしたりする可能性があるし、そもそもミステリじゃないので、エンターテイメント東野圭吾を求める人には勧めません。

「ダイイング・アイ」/東野圭吾

 久々に東野圭吾の本を読んだ。やっぱり東野圭吾は見せるのがうまいなぁと思う。今回の作品はミステリというよりはサスペンスのような感じで、断片的に記憶を失った主人公が真実を知っていく、というストーリー。スピード感もあるし、映像化されたシーンが頭にどんどん浮かんでくるあたりが、ドラマ化されても人気な作家たる所以か?

 ただ、次々と新しい真実が分かる一方で、それが全部ひとつにはつながっているようには思えない。成美はどのような人物だったのか、瑠璃子は何を考えていたのか、といったあたりが伝わっていれば、より恐怖度の高い作品になっていたのかなぁと。

 テーマとしては交通事故の被害者と加害者、罪の意識とかですが、ここもちょっと物足りない感じがした。ストーリーや設定はよく分かったが、東野圭吾にしては詰めが甘いような気のした作品でした。期待しすぎなのかもしれませんが(笑
 もちろん、冒頭に書いたとおり読みやすい作品なので楽しめると思います。

「イン・ザ・プール」/奥田英朗

 神経科医の伊良部が患者の悩みを痛快な手段で解決していくといった短編集。笑いの中に現代社会のちょっとした問題を混ぜ込んだ愉快な作品です。

 とりあえずこんな医者はいないだろうけど、患者のほうは実際にいるかもしれない、というところが恐ろしい。無茶苦茶なことを言っているようだけど、気付かないうちに患者の病気は治ってしまう。そういう意味で、この伊良部はとてもスゴイ医者なのかもしれないなぁ、いやそんなことないか。みたいなね。

「Sweet Rain 死神の精度」

 映画の「死神の精度」を見てきたので感想。

 小説版では、死を判定する死神が出会う人々を描くトリック入り短編集だったんだけど、今回はそんなトリックはなくて、ある女性のエピソードにスポットを当てて、その人生のようなものを描いていることを積極的に伝えてきたので、まあある意味分かりやすい作りでした。実際小説版とはかなり違った印象になってます。

 最近の伊坂には見られない気軽な作品。ああ、もう一度小説版を読みたくなってきたし、文庫版買おうかな~。

「こころ」/夏目漱石

 高校のときに教科書で読んだはずなんだけど。でも改めて読んでみて「この小説をどう頑張ったら一部だけ切り抜けるんだ!?」と思ってしまった。すべてを知ってこその“先生”の告白ではないか。当時の授業がどんなものだったかも覚えていないし、そこで何を得たかも覚えてはいないが、多分くだらなかったんじゃないかと思う。

 「こころ」の中の出来事を並べて物語を書くと、ただの陳腐な恋愛ものになるかもしれない。しかし夏目漱石は違う。その恋愛とか友情とかいうものを、主人公の心の中からのみ描くのだ。文庫本を読みきると分かるが、“先生”の手紙による告白は、全体の半分にもなる。全体の半分ものページを割いて、心の内面をひたすらに記しているのである。
 タイトルが「こころ」である理由もよくわかる。

 それだけ書いて、先生が気付いたことは『おれは策略で勝っても人間としては負けたのだ』というところなんだけどね。今の時代からみれば、こんな当たり前のことは中学生でも気が付くし、そこらへんのアニメとかでも出てきそうなシチュエーションだ。しかし、これを必死に描いた時代と夏目漱石にどっぷりつかってしまった。

 今年はちょくちょくこんな有名作品振り返りなんかもやっていこうかと。ただ単に次に読む本が思いつかなくなっただけのことだけど。

中休み

 ようやく水曜日。雨も一応上がって、今週のなかでは一番まともだったかも。

 朝から「めざましテレビ」羞恥心が歌を歌っていた。おかげで一日中頭の中でその曲が流れてしまって、なんかそんな自分が恥ずかしい。

 夜にまたヘキサゴンを見てしまって、また嫌悪感。あれ、なんかネガティブイメージの3単語ばっかり出てくるなぁ。

「レインツリーの森」/有川浩

 障害者について、ものすごく久しぶりに考えさせられた本。思い返すと、障害者について考える機会は中学を卒業してからほとんどない。中学校のときは、半ば無理やり考えさせられたわけだ。
 というのは、健常者の意見かもしれないね。

 「図書館戦争」シリーズとのコラボレーション企画。図書館戦争で登場するある1冊の本が、実際の本として
 有川節が炸裂しているというか、やっぱり激甘なのです。細やかさとかも表現されていてとてもよいです。

 身の回りに障害者といえる人がいない僕とかは、実際に友人にそういう人ができたときに、普通に接せるのだろうか。普通にすることっていうのは多分ものすごく難しくて、逆に気を遣っているだけで相手に不快な思いをさせてしまうかもしれないし。
 難聴者と付き合うということはどういうことなのか。健常者視点から、どんなに思いやってもそれは好意的に受け取れることと、嫌がられてしまうことがある。お互いに歩み寄って、よく話して、それでもぶつかってしまうけど、そんな付き合い方がちょっと苦しいけど愛に溢れてる、そんなことを感じた作品でした。

充実土曜日

 なぜか早起き。朝からシャワーを浴びて洗濯機を何回か回す。その隙に掃除。素晴らしく効率的、無駄がない。実家からの荷物も届いて万事順調。

 午後はラジオをPCに取り込むための配線をいろいろいじくってたんだけど、どうやらケーブルがよくないらしくて無理だった。出かけるのも面倒くさかったので、ケーブル物色は明日に。

 夜は「めちゃイケ」。恒例の期末テスト企画だったんだけど、まぁ今までほどの面白さも特になく。あっちゃんは賢いんだなぁということを認識したぐらいか。