「幻惑の死と使途」/森博嗣

 「幻惑の死と使途」を読んだのでメモ。

 1ヶ月ぶりに森博嗣ワールドに戻ってきて、やっぱりストイックな世界観だなぁと。理系人間ならきっと楽しく読めるだろう部分が随所にあった。
 犀川が最後にのべる「名前」というものの尊厳については考えさせられる。とはいえ、このことは哲学的にはよく考えられていることであり、それを理系ミステリ作家が利用するというところにギャップを感じているだけなのかもしれないけど。

 前々から森博嗣作品ではトリックは意味を持たないと言っていたけど、今作品もまさにその通り。というか、作中で誰が犯人か、トリックが何かを当てるのは困難を極めるような気がする(厳密には「犯人が誰か」ぐらいは分かるだろうが)。萌絵はちゃんと答えにたどり着くんだから凄いものです。ただ、最後に犀川が付け加えた「本当の意味でのイリュージョン」が、とても考えさせられる結果だったと思う。この作品はミステリではない!

 この巻は奇数章のみで構成されている。次巻は偶数章のみの「夏のレプリカ」だが、これらの関係はどうなっているのか気になるところだ。早く読みたい。

「ダ・ヴィンチ・コード」/ダン・ブラウン

 実家に置きっぱなしだったこの本、ようやく読み切ったので感想。
 思い返すとこの「ダ・ヴィンチ・コード」は、文庫化したころにバイト先の生徒が単行本の上巻を貸してくれたおかげで、上巻だけ読んでいたのでした。結局そのとき下巻を読んでなかったんだけど、中途半端で終わるのも気持ち悪いから文庫版でその続きを読みました。

 意外と楽しく読めた。だけど、キリスト教とか詳しかったらもっと楽しかったのかなぁとも思う。やっぱり、アメリカとかではキリスト教がもっと身近にあるんだろうか。
 そんな僕から見ると、なんでこの小説(映画?)が流行ったのかがあまり分からない。ただのサスペンスのような感じもする。まぁ、そこにキリスト教云々が関係してくると、興味深く見えるのかも知れませんけど。結局「ふぅん」っていう感じです。

 海外の作品はあまり読みませんが、国語で習ったような作家の作品はいくつかよみたいなぁ。そういえば、ハリーポッターとかも読んでないわけですけど。

「アヒルと鴨のコインロッカー」/伊坂幸太郎

 「アヒルと鴨のコインロッカー」/伊坂幸太郎を読み終わったのでメモ。

 今回も文章ならではのトリック。現在と過去のストーリーが徐々に語られ、その2つが最後に絡み合う。ストーリーが意外と暗いのが気になってしょうがないんだけど、伊坂らしいテーマだったかと。それほど驚きの展開があるわけではないけれど、重力ピエロよりももっとやさしい気持ちに包まれる感じです。伊坂ファンなら違和感なく読めると思います。

 ところで、映画化するらしいです。これをどうやって映画化するんだ!?と思ってしまうのですが、どうなんでしょうか。最後にコインロッカーに××するシーンは印象的のように思います。コインロッカーは仙台駅らしいですよ。
 これをどのように映像化するのか、そっちのほうが気になって見に行ってしまいそうです(笑

「まどろみ消去」/森博嗣

 ここんとこずっと読んでる森博嗣の短編集。長編5編が終わって、ハーフタイムの短編集です。

 非常に難解な短編が続く。解説にもあるように、「1人称が不定」というトリックがいくつかのストーリーで用いられている。これはよくあるテクニックで、読み進めるうちに理解できてくるように作る長編も多い中、最後まで答えを明かさない、きちんと読まないと分からないといった、レベルの高いトリックに仕上がっているものが多い。
 
 はっきりいって、理解できなかったものがいくつかある。だけどそれらの作品に対しても「森博嗣だから何かトリックがあるはずだ」と思ってしまってしょうがない。そしてそれが分からないと悔しい自分。
 数学が分からないときの悔しさと、国語が分からなくて辛い気持ちとが混ざっているような、そんな感じです。

「会議で事件を起こせ」/山田豊

 ビジネスノウハウ書。なんか40代管理職になったような気分です。まぁ、今のところ会議をすることはかなり少ないんですが、バイト先のミーティングなんかをみてると、やっぱりもうちょっと良いものに変えないとだめかなぁと思って。会議に不満を持っていたので読んでみました。初めは立ち読みだったんだけど、買っちゃえーみたいな。勢いだけで。

 でも、結構いい本で、確かに大事だと思うようなことが書いてありました。
 んでね、バイト先でやってるミーティングもいい線行っています。かなりポイントを押さえてます。だけど、それが良いものに変わっていかないのは、「向上」の部分が欠けているからなのかなぁ。だらだらやっていて「何をやったのか」分からなくなってたり、雑談が多くなっていたりして、結局意味のない会議になっている。スキルばっかりで内容がない──中身が伴ってないとはこのことか。
 これからこの本の内容を使う機会があるといいなぁ。

「封印再度」/森博嗣

 昨日は東京だったわけで、その行き帰りに読んでました。森博嗣の「封印再度」。例によってミステリなので書くことがありません。以上!

 今回は昔起きた事件の謎がキーポイント。まぁトリックは微妙。理系的というかそれは反則だろ的な。まぁいつも言っているとおり、森博嗣作品はトリックはあまり重要ではないので。今回なら犀川と萌絵の関係が進展するという部分の方が大きいかと。
 あと、タイトルと内容との一致度は少なくとも過去4作を超えています。毎回意味深いタイトルで、特に「すべてがFになる」は興味を引くタイトルかつ理系的?な印象を与える結末なわけですが、今回の“封印再度”あるいは“Who inside”も、なかなか上手いかなと。
 ミステリとして読むというよりは、ストーリーを楽しめばいいんじゃないかなぁ。うん。

「詩的私的ジャック」/森博嗣

 森博嗣の「詩的私的ジャック」。昨日実家から帰ってくる途中に読んでました。それだけでほとんど読みきってしまって最後ちょっとを読んで今日読了。

 ミステリは感想文が書きにくい! 講評や解説なら書けるかもしれないんだろうけど。ここで感動したとか、名言に線引いたりってことがないからだろうなぁ。
 今回はN大学が良く出てきた。他の私立は何処がモデルか知らないけど、星が丘ボウルとか出てくると親近感です。さらに、工学、建築といった森博嗣節が炸裂していて、多分コンクリートとか建築とか勉強している人には垂涎モノだったのではとか思ったりする。僕とは無縁の世界だからよく分からないけど。
 そんな理系的な森博嗣の作品の中には「真理」を問うような部分がよくある。例えば「夢と希望は何処が違うと思う?」ってね。真理を突くというのは、あたかも文学的なもので難解であることが多いが、実は数学や物理は非常に純粋で単純な真理であり、森博嗣の真理の突き方は文学部の人が書く文章にはない、非常に数学的なもののように思える。そういう数学的で文学的な部分を垣間見ると、森博嗣の作品がただのミステリにとどまらない理由に繋がるような気がする。
 ――ああ、ここまで書いたら残りの感想文で書くことなくなっちゃうぞ(汗

 実家からあと2冊持ってきたから、まだまだ森博嗣が続きそうです。いやー、自腹切らなくていいのは非常にうれしいなぁ。

「笑わない数学者」/森博嗣

 今更かよ!? という声も聞こえてきそうだけど、森博嗣を読んでいます。母親が数年前に購読していたもので、いつでも読めると思うと読む機会を失うものです。今回は文庫化3冊目の「笑わない数学者」です。

 三重県が出てきます。地元です。青山高原! なんてことを言っている場合ではありません。でもミステリーだから中身は書けません。ネット上で検索してみると、「トリックが簡単すぎるから面白くない」なんてことを書いてあります。確かに。細かい事はともかく、「多分そうじゃないかなぁ?」ぐらいにはトリックが分かります。でも、それだけじゃない。
 この作品には非常に細かいウラが存在する。トリックなど、どうでもいいのである。
 文庫の最後の15ページ、そこにすべての謎賭けが、著者からの挑戦が書かれている。あの老人は誰なのか。誰が誰なのか。定義と物語の中に書かれた一字一句とを比較する事から答えを導くという、非常に数学的な謎掛けを提示している。その解説は他のHPにいろいろ書かれているのでここで書く必要もあるまい。

 本書の中に出てきた「5つの自然数を選んで円状に並べたとき、その隣り合う数字を任意個数選んで、21までの自然数をすべて作る」というパズルがすぐには解けませんでした。ビリヤードは9までだと思ってた自分が馬鹿だった(汗

「夜のピクニック」/恩田陸

 実家に帰りました。その道すがら読んでいた「夜のピクニック」を読みきったので読書メモ。
 しばらく空いてしまったのはプライベートやら数学の勉強やらが忙しくて、本を読む時間をとれなかったせいです。反省してます。

 恩田陸作品も初体験だったわけですが、この文章はなんだろう。解説にもあったけど、何か特別大きなイベントが起こるわけではなく、歩行祭という行事の中で自然に発生する会話たちと、それによって少しずつ変化する気持ち。その心の描写が読んでいて心地よい。
 高校生の話なので、僕にとっては昔の気持ちを復唱しているような気持ちにもなる。そういえば忍が融に「行き急ぐ必要はない、今を大事にしたらいいんじゃないか」って言っていたっけ。高校生ぐらいのときだよなぁ、こういうことを考えるようになるのは。貴子(か誰か)が言う。「青春してる高校生なんて少ないんじゃないの?」――あれ、僕もこのセリフ言った気がする(汗
 高校生の過ごし方はいろいろで、友達にも地域にも学校にもよるけど、こういう経験をどこかでして大人になったりするのかな。大きな感動や衝撃はないけれど、ほわほわと少しずつ変化する青春もあるよね。そんな物語でした。

「アキハバラ@DEEP」/石田衣良

 最近何かと話題の「アキハバラ@DEEP」の小説版を読みました。文庫で500ページ越、前にも書いたけど、1冊が分厚いと、良く分からないけど何か損してる気がします。

 予想と違った。秋葉原らしくない。秋葉系はサイバー世界?で戦ってほしかった。物理的攻撃なんかしてほしくなかった。あの状況ではそれしかないんだろうけど、どうせファンタジーならサイバー世界でファンタジーな出来事をおこしてくれてもよかったのに。
 正直言って、僕は石田衣良はあまり好きじゃない。だからって本を読まずに「嫌いだ」と言うのもどうかと思うし、やっぱりIWGPとかは人気だからちゃんと読んでおこうと思う。
 だけど、これに関してはストーリーは面白いしキャラクターにも共感がもてる。裏アキハバラの描写もなんとなく雰囲気は伝わる。だけど、薄っぺらい感じがする。本当に裏アキハバラを研究し尽くしているわけでも、コンピューターに関して詳しいわけでもないのではないか、と穿った見方をしてしまう。
 「あれが石田衣良流なんだ!」と言ってしまえばそうなのかもしれないいけど、荒っぽい文章が目立つのが原因なのだろうか。良く言えば感覚的のように思う。「原子の中の素粒子の中のクォークのひとかけら」(みたいな記述があったと思うけど)とか意味わからんし。

 最終的にファンタジー色が出てしまう本作品を現実的なものの枠内で話していてもしょうがないだろう。ファンタジー作品で、秋葉原という題材を特別視せずに読めば、楽しめる作品だとは思う。けど後半のっぺりし過ぎとも思う。