「レインツリーの森」/有川浩

 障害者について、ものすごく久しぶりに考えさせられた本。思い返すと、障害者について考える機会は中学を卒業してからほとんどない。中学校のときは、半ば無理やり考えさせられたわけだ。
 というのは、健常者の意見かもしれないね。

 「図書館戦争」シリーズとのコラボレーション企画。図書館戦争で登場するある1冊の本が、実際の本として
 有川節が炸裂しているというか、やっぱり激甘なのです。細やかさとかも表現されていてとてもよいです。

 身の回りに障害者といえる人がいない僕とかは、実際に友人にそういう人ができたときに、普通に接せるのだろうか。普通にすることっていうのは多分ものすごく難しくて、逆に気を遣っているだけで相手に不快な思いをさせてしまうかもしれないし。
 難聴者と付き合うということはどういうことなのか。健常者視点から、どんなに思いやってもそれは好意的に受け取れることと、嫌がられてしまうことがある。お互いに歩み寄って、よく話して、それでもぶつかってしまうけど、そんな付き合い方がちょっと苦しいけど愛に溢れてる、そんなことを感じた作品でした。

「図書館危機」/有川浩

 ラブコメ?になってきている図書館戦争シリーズ第3巻。

 ただ、人数がそれなりに多いこのシリーズなのに、すべての登場人物にきちんとスポットを当てて、きちんと個性を描いているところがさすが有川浩。それぞれいい感じになってきて、恋愛面では次の4巻でどのようなゴールを見せるのか楽しみです。

 一方、図書館隊としての成長ぶりも見逃せない。それぞれが得意不得意がある中で助け合って成長していたり、郁本人の部分では両親との決着をきちんとつける場面があったり。

 本当にいろいろあったこのドタバタ図書館戦争も、あと1巻です。“大人になってもまだ若い”ところが今の自分と近いんだよね。そんな笠原たちにちょっと励まされたりしていた今日この頃。終わってしまうのがちょっと寂しいような。

「図書館内乱」/有川浩

 図書館戦争に続いて第2巻。春からテレビアニメ化っていうこともあってか、最近本屋で平積みされてたりするんですね。僕は全部図書館で借りてますけど。

 1作目よりライトノベル感が強くなった気もするけど、テーマがテーマだけに重くならず、軽くならず、程よいテンポと明るさをもって進むところがよいかな。
 前回は主人公を中心に物語が広がっていたけれど、作品が続くことになって各登場人物にスポットを当てた物語が出てくるところが魅力の本作。それと同時に図書館と敵対する組織についても少しずつ語られ始めた。
 全部で4巻ということで、2巻3巻は少しずついろんな色のストーリーが見られるところだと思います。最終巻でどう締めくくられるのか、早くも楽しみです。

「サクリファイス」/近藤史恵

 sacrifice-犠牲。高校英語で覚えた単語だけど、このタイトルから自転車競技は思いつかなかったなあ。自転車競技の奥深さを知った作品。

 最近のミステリブームで、この小説はミステリ的な紹介をされることもあるが、決してそういうものではないと思う。普通の小説としてみたほうがよい。

 主人公が独特な考え方をもっている。人一倍気を遣って、他人のために犠牲になることの方が楽だという生き方。物語としてそのような人物が出てくると、「なんて頼りないんだろう」と思ってしまうだろうが、逆に言うとドキっとした人も多いんじゃないかなぁ。

 しかし、そのような性格も、自転車競技の“アシスト”として活躍する力にはなる。自転車ではアシストという仕事があるらしい。チームとしてエースをサポートするのがアシストの役目。自分が主役になるわけではない、縁の下の力持ちとしての仕事だ。そのポジションとして主人公は成功するわけだ。

 なんだろう。ちょっとこの小説を読んでヤキモキしてしまう自分がいたりする。もっと自分の思うまま生きていくことだっていいんじゃないか、とか思ってしまう。だけど、この主人公にはこのような生き方が向いていて、そういう生き方をも肯定するんじゃないかなぁ。

 一歩引いて全体を見渡す、ということも重要だし、そのおかげでこの物語の中核をなす部分は解決するんだけど。でも、最後までこの性格に対する不満がくすぶり続けた。

 結局何が伝えたい物語なんだっけ(汗

「図書館戦争」/有川浩

 「阪急電車」がよかったので早速同じ有川先生の代表作であるこの「図書館戦争」シリーズを読み始めました。

 もともとライトノベル作家だった(というのは初めの1作だけかもしれないのだけれど)ということもあって、雰囲気はライトノベル路線。こういう作品が本屋大賞にノミネートされていたり、ブランチのような番組で紹介されるのを見ていると、ライトノベルと一般の小説の境目っていうのはかなり曖昧なもののように思えてくるけどね。そりゃあスレイヤーズはちょっと違うにしても。

 というわけで、阪急電車からしてみればかなり空想の世界の話なんだけど、設定どうこうよりも登場人物の人間くささがとっても心地いい。有川作品のいいところは、感情の細かい描写だと僕は思ってます。僕はこの雰囲気が大好きです。

 4月からテレビアニメ化されるらしくて、まぁ夜中じゃ見られないだろうけど、一足お先に読んでいこうと思います。

「クレオパトラの夢」/恩田陸

 MAZEと同じく神原シリーズなんだけど、今回は推理小説っぽい要素もあって楽しめました。amazonレビューなんかをみると、「恩田陸ファンよりもミステリファンが楽しめそう」なんて書いてあるところをみると、僕はミステリファンなんでしょうね(笑

 今回はある謎を解明するために神原が動く。神原と同じぐらい頭の切れる妹と男と。とりあえず登場人物全員が駆け引きをしながら人と接している様子が伝わってくる。

 誰が何のために動いているのか。神原シリーズは、こういうものに合っているとは思うんだけど、どうなんだろう?

「阪急電車」/有川浩

 久々によい本に出会った。

 出会ったのは近くの本屋。新刊として平積みになっていたんだっけ。タイトルは「阪急電車」。懐かしい単語とその電車のイメージカラーをモチーフにした装飾が目を引いた。
 「面白くなくてもいいから、読んでみよう」と思って図書館で予約(買わなくてゴメンナサイ)。ようやく手に入って読みました。

 宝塚線沿線に住んでいた僕は、実は今津線には乗ったことが無かった。駅の数も少なくて、各停しかないこの路線の一つ一つの駅を、ゆっくり進んでいく電車と物語。繊細に描かれるいろいろな人の思い。少しずつ絡み合う人間模様。これらが読み手を明るい気持ちにさせてくれます。

 久々にホクホクした気持ちになれた、(今のところ)今年一番のお勧め作品です。

「MAZE」/恩田陸

 今回もよく分からない……推理小説でもなく、サスペンスでもなく? 恩田ワールドは難しいわ~。

 誰も出てこられない建物。不可思議で、恐怖のみが存在するような設定が先攻するんだけど、それが明かされることはない。主人公の1人はその謎に立ち向かってはいるんだけど、最終的に得られた結果を聞いたらそれはあんまりだと思ってしまった。

 僕が理系人間だからか、こういう謎にははっきりとした答えを用意してもらいたいと思ってしまうんだけど、そういうわけではなく謎は謎のままで、不思議は不思議なほうがいい、みたいなことなのかなぁ?

 一応これはシリーズ物なので、次のクレオパトラも読んでみるつもりですけど~。

「Q&A」/恩田陸

 質問形式で進む物語。最後まで読み進めると事件の真相が明らかになるのかと思いきや、そういうわけでもないのね(汗

 ショッピングセンターで何らかの原因でパニック事件が発生。大勢の被害者を出す惨事となるが、実際に内部で事件は起こっていない。被害者は全員“パニックに殺されている”のである。

 実際にこれはありうる話だとは思うし、読後感としてはあまりよくないがこれが世の中かと思わされるところもある。
 一方で、せっかくQ&A方式でストーリーが進むという特殊な記述を使っているのに、それによって生まれる効果が特に感じられなかった。トリックがあるわけでも、うまい仕掛けで事件が解明するわけでもない。多少なりとも期待して読んでいただけに肩透かし。
 ……それとも、僕が気付いていない仕掛けが何かあるのだろうか?

「西の魔女が死んだ」/梨木香歩

 超有名なこの作品。ああ、何で25歳にもなって読んでるんだろう(汗

 でも、意外と25歳でも楽しめる。反面、なんでこれまで読んでなかったんだろうって、ちょっと後悔する。「名作は、読むときの自分によって違う作品になる」というのは、紛れもない事実だと思うんだけど、この作品をもっと若いときにただ読んでいたときにどんな気持ちになるんだろうっていう、どうしようもない問題だ。

 児童文学といわれているけど、そこにはおばあさんの一回りも二回りも大きな人間が描かれていて、“小娘”まいの悩みをうまく解決しちゃいます。ちょうどまいのように悩んでいる女の子が、この小説を読んで新しい自分に生まれ変われるんじゃないかなぁと思います。

 魔法を掛けられたのは、まいじゃなくて、読者なんじゃないかなあ。