「螺鈿迷宮」/海堂尊

 海堂先生の作品にしては、結構な恐怖作品でした。といってもホラーではないし、ミステリーというジャンルもちょっと違うのかも。最後はミステリーらしく落としどころもあるんですが。読み応えあります。

 老人介護センターと病院を一体化したような施設となっている桜宮病院に潜入してそこで起きている謎を解明するというのが物語の発端。末期患者が思ったとおりのタイミングで死んでいくというなんとも解せない謎をもちつつ、実はその謎よりも深いところに真相が隠されているのです。

 なかなか面白い作品だったので、読んでみて損はないと思います。

「モダンタイムス」/伊坂幸太郎

 考えさせられることばかり書いてあった。分からないことを何でもググって検索したり、分断された仕事では善悪が判断できなくなったり、いま間違いなく世の中はこの「モダンタイムズ」で描かれているような世界に向かっていっているのじゃないかと思ってしまう。

 かつての伊坂が時系列トリックを得意とする作風だったのに対し、最近の作品は、現在の世の中、たとえば政治や世論といった移ろいやすいものがいかに危険かを表現している。本屋大賞に選ばれた「ゴールデンスランバー」もその中の1つだ。

 かなり怖い作品であるのと同時に、考えてしまう作品でもあった。

「別冊図書館戦争II」/有川浩

 ようやく入手して読み終えたのでメモ。

 いよいよ完結編。別冊Iに比べて多少マジメな話もあったりしますが、基本的にはあまーいストーリーばかりです。手塚と柴崎のなんともいえない関係をきっちり片付けてくれたし、郁と堂上の2人はどこまでもラブラブだし、もうなんか読んでいるほうが幸せになるようなストーリーで、読んでいて気持ちいい。

「禁断のパンダ」/拓未司

 このミス受賞作なので読んでみた。楽しく読めたし、面白かったです。

 確かに巻末にあるコメントのところにあるように、「このグルメ小説がすごい」だったらもう最高。どっちかというとミステリとしては単純だし、なんか本格ミステリ!!っていう感じはしない。
 だけど、それを払拭するぐらいグルメ部分もよかったし、導入や展開は読みやすくて楽しめた。あと神戸だったしね(笑)

 本格ミステリを期待する人――まあタイトルからそんな人はいないと思うんだろうけど――にはあまりお勧めしないけど、楽しいミステリを読みたい人にはいいんじゃないかな。

「ジーン・ワルツ」/海堂尊

 今回は、いつもにもましてメッセージ性が強かったように思います。ミステリとしての色なんかはあまりなくて、だけどそれを気にさせないぐらいストーリーにのめりこんじゃいます。

 本質にはあんまり触れないで、ちょっと思ったことを。

 まずは、妊娠についてちょっとマジメに勉強になった。中学やら高校の保健体育ぐらいの知識ではあまり詳しいことは勉強しないと思うわけだ。だけど将来通る道なら、もうちょっと勉強しておいて損はないなぁと思わされた。
 あとは、不妊治療を必要とする人のこと、妊娠が安全なことではないこと、それらを含めていろんな人たちが現れる産婦人科の様子。

 言葉にはしにくいけど、いい本でした。じんわり系で個人的にお勧め。

「レバレッジ英語勉強法」/本田直之

 ハウトゥ本。英語の勉強は偏った勉強がよい、みたいなことが書いてありました。自分の好きな分野だけで使える英語をまず覚えろ、みたいな。まあそうやって勉強できれば楽しいんだろうけどねぇ。
 でもやるのはそう簡単じゃないし、教材とか発揮する場所とか、実際にやり始めるには多少難しいかなぁ、といった感じ。まあいいけどね。

「夜明けの町で」/東野圭吾

 めずらしく不倫話。めずらしく淡白。

 ということで最近出た東野圭吾作品を読破していこう企画で本作を読みました。犯人ではないのかと疑われる女と、不倫という異常な関係を続ける主人公。シチュエーションにはどきどきするが、その展開にはあまりドキドキしない。
 どちらかというと白夜行や流星の絆のように、ストーリー展開にドキドキする作品が好きな僕としては、あんまり盛り上がらなかったので、初めて東野圭吾を読むという人にはお勧めしないかも、といった作品でした。

「ジェネラル・ルージュの凱旋」/海堂尊

 バチスタシリーズ第3弾の本作。
 
 前作はなんかファンタジックであまり面白いとは思わなかったんだけど、本作品は面白かった。それにあれと双璧をなす、というといいすぎだけど、一緒に読んだほうが楽しめるのは間違いない。あれは伏線だったのだと考えればなかなかうまく出来ているなあ。

 今回はドクターヘリというテーマがありつつ、なんと言っても速水のかっこよさが際立つ。ちょっと演出が過ぎるんじゃないかと思ったりもするけど。
 一方で、あれ、田口&白鳥の掛け合いはバチスタ以来まったく見られないなぁという気も。これはこれでよいと思うけど、バチスタが売れた今、誰もが田口&白鳥コンビの掛け合いを期待しているのではないだろうか。そこらへんは次回作に期待かな。

「流星の絆」/東野圭吾

 両親を殺された3兄妹が復讐を誓って生きていくミステリ。さすが東野圭吾といったところがあって、その生き方が非常に暗い。人を騙してお金を得るという陰の世界で行きながら、事件の犯人を探し続けるというストーリーは、白夜行を思い出させるぐらい暗いです。
 途中で静奈がターゲットである犯人の息子に惚れてしまうシーンなんかは、もう東野圭吾の得意な展開なものだから、ドキドキしてしまいました。そして最後の最後で大どんでん返しがあって、最後までとっても楽しめる作品でした。暗いけど、そんな中にも希望の光もある。バランスの取れた作品だと思います。
 テレビドラマ化も決定して、どのような作品になるのかも楽しみです。
 
 注意。このレビューにもちょっとした嘘があります。

「陰日向に咲く」/劇団ひとり

 文庫になっていたので読みました。
 ネタバレのようになるかもしれないけど書くと、短編のようで少しずつ絡んでいくという作品なんですね。よくあるパターンやん、なんて思ったけどその絡み方が結構心地よい具合で、はまってしまう作品です。
 内容も結構よくて、確かにブームになるだけはあるのかなぁ、なんて。