「幻惑の死と使途」/森博嗣

 「幻惑の死と使途」を読んだのでメモ。

 1ヶ月ぶりに森博嗣ワールドに戻ってきて、やっぱりストイックな世界観だなぁと。理系人間ならきっと楽しく読めるだろう部分が随所にあった。
 犀川が最後にのべる「名前」というものの尊厳については考えさせられる。とはいえ、このことは哲学的にはよく考えられていることであり、それを理系ミステリ作家が利用するというところにギャップを感じているだけなのかもしれないけど。

 前々から森博嗣作品ではトリックは意味を持たないと言っていたけど、今作品もまさにその通り。というか、作中で誰が犯人か、トリックが何かを当てるのは困難を極めるような気がする(厳密には「犯人が誰か」ぐらいは分かるだろうが)。萌絵はちゃんと答えにたどり着くんだから凄いものです。ただ、最後に犀川が付け加えた「本当の意味でのイリュージョン」が、とても考えさせられる結果だったと思う。この作品はミステリではない!

 この巻は奇数章のみで構成されている。次巻は偶数章のみの「夏のレプリカ」だが、これらの関係はどうなっているのか気になるところだ。早く読みたい。