「時をかける少女」/筒井康隆

 今日も特に書くことがないので、先週土曜日に読み終えた「時をかける少女」の感想。

 ってか短編だったの!? という前置きはさておいて、可もなく不可もなく普通?って感じ。というのも、メディアミックス化されているこの状態で(さらに、作者が筒井康隆ということもあって)、かなり面白いものだと勝手に期待していただけに、普通だったからがっかりしてしまったのかも。
 もともと少年少女向け(ジュブナイル)作品という位置付けだということを考えると、文章はちゃんとしているし、そのころの子供たちの心をちょっとだけくすぐるうまくまとまったストーリーだと思う。ちょっと恋愛感情の導入が急すぎるとは思うけどね。

 これだけ単純かつ面白いものだからこそ、映画化やドラマ化という他人の手によって、さらに成長する物語なのかもしれない。そう考えてみると、この「時をかける少女」の面白さは底知れないもののような気がする。

「陽気なギャングが世界を回す」/井坂幸太郎

 疲れて帰ってきて寝ていただけで書くことも無いので、先週木曜日に読み終わっていた「陽気なギャングが世界を回す」の感想。

 祥伝社とかいうあまり有名でない出版社から出ているおかげで、大学生協にはおいておらず、お取り寄せで入手。最近有名になっている井坂作品だから、その辺の本屋ならたくさんおいてあるのにね。大学生協ももうちょっと勉強してもらいたいものだ。

 中身は非常に痛快。井坂作品にしては非常に痛快で読んでいて楽しい感じ。その中でも井坂らしさは出ている。
 途中のストーリーは、とにかくストーリーを楽しむためにあるようなものだと思うので、その点は割愛。最後に作中に登場した様々な点と点が、見事に線になっていくところは小気味よかった。

 井坂作品で初めて映画化されたこの作品、映画も見ればよかったなぁなんて、いまさらながらに思う。どんな風に映画化されたんだろう。DVDとかで見てみるしかないか。
 来年には「アヒルと鴨のコインロッカー」も映画化。そのころにはこれも文庫化されるだろうし、楽しみが増えます(笑

「助手席にて、グルグル・ダンスを踊って」/伊藤たかみ

 祝、芥川賞受賞と銘打って店頭に積まれていた「助手席にて、グルグル・ダンスを踊って」を読んだ。伊藤たかみのデビュー作。
 wikipediaに書いてあったんだけど、伊藤たかみさんは三重県にも縁があったりして、平井堅と同級生なんだって。

 誰もが世界は自分が中心に動いていると思っていて。そのうちみんなも動いていることに気付いたりして。みんな、グルグルダンスを踊るのが一番幸せになる方法なんだから。
 正直、僕にはこんな時代はなかったけど、世の中の高校生はこんな世界なんだろうかなぁ。それにしては子供っぽい気がする。
 反面、手にしているものを普通にしたら、普通の高校生っぽくなるのかなあ。結局はケンカとか恋愛とか、自分の周りで起きることを自分中心で見ているだけだったりして。

 解説はとっても的確だった気がする。そう、彼らは子供で、仔犬みたいなものなんだ。キャンキャンとじゃれ合うようなケンカをして。瀬戸内寂聴の言葉を借りれば、アメリカの片田舎の青春ドラマを見ているような感じだ。

 というわけで何か得るものがあるのか、という気もするけど、久々に若ーいパワーをもらうことができた小説でした。中高生にお勧めかな。

「毒笑小説」/東野圭吾

 ひさびさに東野圭吾の本を読んだ。今回読んだのは「毒笑小説」という短編集です。

 いろんな雰囲気の短編があって、自分にあった“東野圭吾”を見つけるのにちょうどいいのかなぁ、と思います。僕が気に入ったのは、

  • 「誘拐天国」 なんか富豪刑事みたいなテンション。オチが切ない(笑)。
  • 「つぐない」 なかなか泣ける。東野圭吾の雰囲気がよく出てる。
  • 「ホームアローンじいさん」 もうありえない。けど笑える。完全なるジョーク。
とかかな。

 巻末の対談にも出てくる筒井康隆氏は「富豪刑事」も書いている、毒舌・ユーモア小説で有名な作家さん。最近では「時をかける少女」とか「日本以外全部沈没」でも知られてますね。
 ……というわけで、次は筒井康隆にズームイン!

「砂の器」/松本清張

 昨日から本格的に読み始めた「砂の器」を読み終えたのでメモ。「読みたいんだよねー」と友人の前で話していたら貸してくれたものを2日で一気に読んでしまいました。

 実は映画化やドラマ化されて有名なこの作品なんですが、僕は今まで名前だけしかしらなくて、小説は勿論、映像も見たことが無かった。(まぁ、犯人が音楽家ということはさ、中居君が主役やってたから分かっちゃってたわけだけどさ(汗)
 初めは「古い作品だし読むのは大変かなぁ」なんて思ってたけど、特に後半、主人公である今西が次々と点と点を結んでいくあたりは、そのテンポが小気味よくてどんどん読んでしまった(下巻は2時間半ぐらいで読み切ってしまった)。
 どうして読みやすいのかと考えてみると、やはり今西の描写が非常によい点が上げられるだろう。まず今西の心情はとけ込みやすく、読者が苦にならない。また、描写がなかなか緻密だと感じた。捜査のためたびたび旅行に出掛ける今西だが、その旅先での描写も丁寧で、土地を感じさせる。あと、(当時からみた)新進芸術家の表と裏のやり取りなんかも、読んでいて興味深い。

 ただ、トリックともいえる“新しい完全犯罪”にはちょっと参った。それはどうかと思ったわけだ。そうそう都合良くいくものだろうか。まぁ押し売りを撃退する程度なら、うまくいくのかもしれないけど、焦点を合わせたり、じゃあ自分には害がないのか、そういうところを科学的に考えると無理があるように思った。
 あと、どうしても言及しなくちゃいけないのは、偶然に由来する推理が多いこと。こればっかりは多分誰もが思ってるんだと思いますけど。

 映画を見た友人は泣いたといっていた。確かにラストの方は同情を誘う。小説を読んでいて泣くほどでは無かったが、映画では多分泣けるようにできているのだろう。機会があったら借りてこようと思う。

「ラッシュライフ」/伊坂幸太郎

 ここのところずっと読んでいる伊坂幸太郎の文庫3冊目。今回は「ラッシュライフ」です。

 とりあえず登場人物が多いこの作品。初めのうちは次々変わる登場人物に圧倒されて読みにくかったんだけど、読み進めていけばやっぱり裏切らない伊坂作品! 450ページ程度あるこの小説で、300ページぐらい読んでようやく面白さに気付くこのトリック。
 文庫の見開きすぐに出てくるエッシャーの絵が、はじめは何のことか分からない。作中にもなぜか印象的に出てくる、なのにやっぱり分からない。
 だけど読み進めていくうちに、不思議なことに気付く。これはまさにエッシャーの絵じゃないか! 気付いてしまうと作者の緻密な作戦が見えてくる。まんまと作者のトリックにはまっていた。
 伊坂ワールドと言うよりはトリックが楽しい作品でした。

 伊坂幸太郎の文庫化された作品は、新潮文庫では3冊で終了。あと1冊、祥伝社から文庫化されている「陽気なギャングが地球を回す」を読みたいなぁ。

「オーデュボンの祈り」/伊坂幸太郎

 「オーデュボンの祈り」を読み終わったので感想。

 伊坂幸太郎作品は2冊目。はじめに読んだ「重力ピエロ」は独特の伊坂ワールドが爆発していて、そこにはまった私。筆者のデビュー作である本作はどうかというと、やはり伊坂ワールドの原点があった。
 どこか不思議な現実。解説には超現実なんてことを書かれていたりしましたが、半ファンタジーな世界を舞台に広がる。
 伊坂幸太郎にミステリーというジャンルは不適切だと思う。確かにある事件がある。しかし求めるのはその犯人ではなく、その事件を解決する間に得る知識や思想である。それは本の主人公と本を読む読者のどちらもが得る知識や思想。
 そういえば、この作品では推理小説の“メイタンテイ”に対して言葉が書いてあるが、これは筆者本人が読者に伝えたかったことなのかとも思う。そして筆者自身がその後取り入れる手法となる。

「号泣する準備はできていた」/江國香織

 読み終わったのは15日ごろで、「重力ピエロ」より先だったんだけどね、書くタイミングが。

 直木賞受賞作「号泣する準備はできていた」は、僕にとっては江國香織作品2作目。前回の「東京タワー」のときは結局よく分からなかったんだけど、今回この作品を読んでようやく江國香織の世界観が分かってきたような気がする。
 結局こちらも不倫やら浮気やら、非日常を扱った短編集。いや、これが日常という人も多いのだろう、だからこそたくさんの人に受け入れられるのかな?
 あとがきにもあったように、見た目が違って中身はほとんど均一な飴のような短編が並んでいたような気がする。ただ、江國香織作品を始めて、あるいは2作目として読んでも得るモノは少ないのかなぁ。

 「きらきらひかる」は有名だよね、ドラマにもなったし。こういう有名どころを読んでからまた戻ってきたら、また違った印象があるのかもしれないと思った。奥が深いのかただ浅瀬なのか。

「重力ピエロ」/伊坂幸太郎

 今日は本の感想。先週末購入した「重力ピエロ」です。伊坂孝太郎の文章を初めて読んだけど、僕は好き。なんだろう、所々に見せつけられるジョーク(?)や、独特の世界観がどんどん興味を引いていって、ストーリーとは別に文章に引きつけられた。
 そしてストーリーもそれなりに楽しめた。平凡な兄と特別な事情を持つ弟の接点は「遺伝子」? そして連続放火事件とこの兄弟の関連とは。一見ミステリーのようで、そうではなく、純粋に親子、家族の絆とは何かを考えさせてくれる物語です。ミステリーとして犯人探しを目的に読んでしまっては元も子もありません。
 Amazonのレビューとかを見てみると傑作と呼ばれる反面、ストーリーが単調だから面白くないという意見もあった。確かにストーリーについては超面白いというわけではないけど、文章を読んでいて引きつけられることは間違いありません。著者の違う作品を読んでみないとなぁ。

「爆笑問題の「文学のススメ」」/爆笑問題

 今年も夏の文庫祭りの季節です。生協の本屋にも沢山の本が山積みにされているので、その中から読みやすそうな本を買ってきて一気に読んだ。それがこの本。
 正直太田さんのツッコミは活字にするとウザイ! だけど、やっぱり節々に賢さがあって、話をどんどん展開させている。進まないけど(汗
 作家の人の普段の生活が垣間見えるような感じ。○○のススメといって、普段の生活でどんなことを考えているかとかが分かるっていうのが面白い。こればかりはその人の本を読んでいても分からないことが多いからね。
 個人的には児玉清さんとの対談コラムが面白かった。