「完全恋愛」/牧薩次

 「このミス」上位作だったので、読んでみました。ものすごいボリュームで、さらに冒頭から昭和、戦後という時代設定だったので、読むのが大変かなと思っていたのですが、少し読み進めるうちにのめりこむ感じはさすがでした。

 すでにレビューなどがたくさん紹介されていて、その触れ込みが「誰にも気付かれない犯罪が完全犯罪ならば、誰にも気付かれない完全恋愛なるものは存在するのか、それはどんなものなのか」といったものだったので、それを頭に入れて読んでしまうと、冒頭数十ページで大きな意味で物語の本質のネタばれはしてしまう。しかしそのことをこれだけたくさんのページをかけて完全恋愛の物語をつむぐというのはすごいことだと思います。

 ミステリ要素もいくらかあって、僕の場合最後まで気付かなかった点も多くありました。ただ、最後の最後でその謎を解明する部分が、ちょっと説明くさいというか押し付けがましいというか、なぜか「読者に向けて説明している」ようになってしまったのは残念。あくまで物語の中の世界で自然に完結して欲しかった。