「終末のフール」/伊坂幸太郎

 とある団地のいろんな人間の生活。ただ1つ現実と違うのは、あと3年で地球が滅びるっていうことだけ。その事実が分かった直後は荒れた社会も、みんな疲れたのか収まってきた。
 そんなちょっとだけ平和を取り戻したあと3年の街で生きる人々の、いろんな人間の交錯するちょっとした生活を描く。

 ……本の帯とかに使うにはちょっとネタバレしすぎかもしれないけど、これで全部。作品の内容を的確に紹介したと思う。

 ただこれでは感想にもメモにもならないからちょっと深入りしよう。
 町には、いい人もいれば悪い人もいるし、人それぞれいろんなことを考えているんだけど、そういういろんな人が1つの町というコミュニティの中に住んでいて交錯し続けている。
 ある人は生きようとし、ある人は死を選ぼうとする。最後にやりとげたいことをする人もいれば、地球滅亡など気にもかけず我が道を行く人もいる。あと3年という微妙なスパイスによって際立つ人間模様が描かれる。

 中身はコメディ。それぞれの作品の登場人物を楽しめばよい。だけれど、最終的には生きていることを実感できたり、ほっと一息つけるようなほんわか作品だと思います。
 この作品もそうなんだけど、こうやって伊坂幸太郎を読み進めてきて最近思うのは、伊坂幸太郎は「ちょっといい話」系が増えてきたなぁと。まあ、僕はそんな伊坂幸太郎が大好きなんですけど。