「シアター!」/有川浩

とある劇団の話。
趣味として劇団をやっている人たちが、本気でそれを商売としてやっていけるのか、というところを目指していく物語。
まあ、この劇団はもともとそれなりの人気のある劇団らしいのでよいのですが、
普通に考えると厳しいんだろうなあ。

有川さんの作品にしては、普段とは違う世界観を描いていて、
なおかつ誰にでも読めるライトノベルということで、
今回出しているこのレーベルにちょうどマッチしていると思います。

読んでいると、ちょっとだけ元気がでてくるかな。

「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」/万城目学

小学1年生の女の子とペットの話。おとぎ話のような物語。
それ以上でもそれ以下でもなくて、コメントはしづらいんだけど、
おとぎ話なのでほんわかした気分になれればいいんだと思います。
万城目先生のこれまでの作品とはちょっと毛色の違う作品だと思いますが、
根底にあるユーモアなんかは同じなのかなあと。

「さよなら、ドビュッシー」/中山七里

このミス大賞受賞作。

ピアニストを目指す遥の周りに起こる事件。

冒頭から事件が続く。
大火事に巻き込まれ祖父と同世代の親戚をなくし、自らも一命を取り留めたものの、
大やけどで全身が思うように動かせなくなってしまう。
さらに遺産狙いなのか、一歩間違えば命を落としかねないような“いたずら“をしかけられ、さらに母親の転落死。

しかし、ピアノの先生岬との二人三脚でこれらを乗り切り、遥はピアノコンクールの出場まで決める。
音楽や演奏に対する表現はとてもうまくて、とくにコンクールのシーンなんかは、その風景が思い描けるほどでした。

が、遺産だとかなんだとか、昼ドラっぽい展開だなあという感じはあります。
最後の最後でそうくるか!という展開ですべての伏線を回収するわけです。
あ、でもこのオチも昼ドラっぽいか?

「ハング!」/誉田哲也

武士道シリーズの作者の作品だったので読んでみた。

誉田先生は警察ものも得意とするらしいのですが……、
読んでみたらちょっとがっかり。
思てたのと違うー!((C)笑い飯)というだけなんですが。

警察ものときいて、まあ内部の政治的なドロドロしたものか、逆に痛快な小説だと思っていたのだが、
どちらでもなく、次々殺される仲間や凶悪な犯人像が現れてきて、
まあ一言で言うと暗い。ので読後感は微妙でした。

これが誉田氏の作風なのかもしれないので、他の作品も読んでみないとなんともいえないですけど。

「SOSの猿」/伊坂幸太郎

あれ、と思った。
前作「あるキング」はともかく、今作は分量からいっても本気の作品だとは思ったんだけど、その割にはこれまでのワクワク感を感じなかった。

しかし、ちょっと振り返ってみると過渡期のような位置づけなのかもしれないと思うようになった。
「ゴールデンスランバー」や「モダンタイムス」あたりは、
政治や法律を含めたマクロな社会を舞台に書いていたように思ったんだよね。
「大事なものは(世間の)イメージだ!」というのは、まさに現代の日本を象徴している。
一言で言えば、国民はマスコミや社会が作った潮流通りに流されている、といった感じ。

今回は、引きこもりの少年も出てくるし、問題が起こっているのは個々の人間。
これまでの作品と違ってミクロな社会を舞台にしているのです。
そう捉ええなおすと、この作品は伊坂の方向性が変わった挑戦作とも読み取れる。
次の作品がどう出るか、でこの作品の評価は決まる。

「京大少年」/菅広文

京大芸人の続編。

まあロザンがどのように芸人になってきたかが分かる作品で、
ロザンファンにはもちろんですが、勉強法の参考にもなるとは思います。

少なくとも理系の僕から見ても、
数学はパターンを暗記、化学は問題演習というのは正しいと思います。それが基本ですからね。

あと一番大事なのは自分を信じることで、
「他人が10時間勉強しているんだから、11時間勉強すれば受かる!」のようなことを強く信じることは、合格に重要なことだと思います。
結局は、受かっている自分を、強く強く想像できるかどうかが大事です。

「塩の街」/有川浩

処女作である有川先生の作品。
もともとは電撃文庫の作品とのことですが、ファンタジックな部分と現実実を帯びた部分があったりして、
その辺の絶妙なバランスは有川先生ならでは。

確かに本編だけでも成立しているんだけど、
単行本化されたときに加筆された後日譚とあわせることで、より完成度が高くなったように感じるから不思議。

有川さんの話は、物語られることによって読者の頭の中にどんどんキャラクターや風景が根付いていって、
共感を呼ぶようになってるのかもしれないなあ。

「プリンセス・トヨトミ」/万城目学

大阪の人間は、実はある秘密を抱えている。

……といった本当におバカさんな妄想を、とことんマジメに物語として組み立てたお話。
それ以上でもそれ以下でもないが、それが万城目作品の面白いところでもあるので、あまり突っ込むべきでもないかなあと(笑

ちょっと間延び感もありますが、娯楽として楽しむならよいかと思います。

「殺気!」/雫井脩介

殺気を感じる女の子の日常と過去の事件。

いろいろな伏線が張られていて、一応それらすべてが線となって結ばれて完結する、
のでよいのだが、ハラハラドキドキ感はあまりなかったなあ。
波乱万丈なことが起こる女子大生ましろを描くのは楽しいだろうけど、
ストーリー自体はそれほどでもなかったと思います。

「神様のカルテ」/夏川草介

本屋でやたら平積みにされているので読んだ本。

無難に面白かったが、語り口調がちょっと読みづらいのはどうしたものか。
本文中で言い訳しているがそれ以上にちょっと読みづらいだけ、という印象が残る。

文体が表紙を担当したカスヤナガトのイラストとのギャップがちょっとありますけど、
このイラストに引かれて読んでも、読みやすい感じなのでよいとは思います。

というのも、医療ものっぽいタイトルの割りに、
そういうことをあまり感じさせない作品で、読みやすいとは思います。
どの辺が神様のカルテだったのかは分かりかねますが。