「オレたちバブル入行組」/池井戸潤

大人気半沢直樹の原作。
ドラマの5話までの内容です。

いやあ、原作ももちろんとても面白いんだけど、
ドラマはその原作を踏まえてもっとうまく構成し直してあって、
だからこその高視聴率だったのかな、という感じ。

この原作のタイトルでは人気が出なかっただろうし、
「倍返し」なんていう単語は1回しか出てこないのに、
それをキーフレーズに使ったドラマの監督はすばらしいと感じました。

若干ドラマとは異なるものの、ほぼそのまんま。
素晴らしい原作あってのドラマ版だったんだな、と通関しました。

「猫旅レポート」/有川浩

有川さんの作品。
なんだろう、ものすごく悲しい展開なんだけど何故かほっこりするという、不思議な物語。

有川さんの文章は、本当に人を優しくする力を持っているなあ。
あまり元気じゃなかった自分にちょうどよい作品でした。

「残り全部バケーション」/伊坂幸太郎

伊坂先生の作風は炸裂していて、しかも痛快な短編ばかりだから、
登場人物が“怖い人”なのに、面白く読めるから不思議。
もちろん自分がそんな人と関わるのは絶対いやなんだけど。

短編と短編の間がそれぞれつながっていて、
しかも書き下ろしの最後の作品は、一作目でもやもやしていた部分を、
さらにもやもやさせるんだから困ったものだ。
しかし面白いからしょうがない。

長編とはない魅力が詰まっていて、少し前の伊坂っぽい雰囲気もあり、
非常に面白い作品でした。

「三匹のおっさん ふたたび」/有川浩

1つの町を舞台に、正義感たっぷりのおっさんが、町の問題を解決していくシリーズの続編。
有川さんの作品の割には、おっさんくさかったり、人情味たっぷりなんだけど、
その語り口調が有川節だから小気味良い。

1話完結で、どれもすかっとするお話ばかりなので、
読んでいて明るい気持ちになれる作品でした。

「昨夜のカレー、明日のパン」/木皿泉

久々の読書。

いくつかの短編を通じて、
人と人とのなんともないつながり、みたいなものが表現されているんだけど、
あまりピンとこなかった。

こういうのは、しみじみ来るときとそうでもないときが激しい。
あと、僕はもともとこういうのが得意ではないというのもあるが、
それ以上にそもそも日本語の物語を追いかける能力が低下しているかもしれない。

「マスカレード・ホテル」/東野圭吾

大半が、ホテル業務の描写だったように感じる不思議な作品。
ホテルには、本当にいろいろな人がくるんだなあ、なんて思ったり。
ミステリ小説なのに。

ホテルを舞台としたミステリ作品。
スピード感と分かりやすい描写で、すらすら読めるのはいつものこと。
オチは思ったよりあっけなかったが、読みやすく楽しめる作品としては非常によい。

ホテルマンと警察官が
相反しているところから、意思疎通しあえるようになっていく様は、
東野圭吾らしい感じで、うまく描写されているように思いました。
これも分かりやすい、っていう意味です。

「ヒア・カムズ・ザ・サン」/有川浩

冒頭に紹介してあるのだが、
とても簡単なプロットだけをもとに描かれた2つの作品。
1つは完全なオリジナル、そしてもう1つは演劇化された作品をリライトした作品。
どちらも同じような登場人物なのだが、内容はまったくもって違う、そんな作品だった。

当然のことながら、完全オリジナルの前者のほうが、作品としてよかった。
というのは、主人公の持つ「思い」を感じ取る能力を生かした作品になっている
ように感じられたからだ。
それに比べると、後者(作中ではパラレルと呼ばれる)ほうは、
演劇があったこともあってか、展開は少し地味だし、
何よりこの特殊能力の活かし方が弱かったように感じた。

読みごたえはそれほどないけれど、
こういう“コンセプトありきの作品”というのも悪くない。

「夜の国のクーパー」/伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の長編。
舞台は、文明がまだあまり発達していない時代の、どこともよくわからない小さな国。
そこで起こっている出来事が、猫の視点で描かれる。

伊坂作品によくあるが、
ある出来事が現実の何かを揶揄しているということが今回は多い。
ただ、それを人間の主人公が株や現実社会に置き換えて説明しているのは、
いささか滑稽な感じもするが。

また、鼠と猫とのやり取りが、
同じようにこの小さな国と隣の大きな国との関係と同じようになっていたという、
これもうまいこと仕組まれているなあと思うところである。

ただ、とても面白いんだけど、全体的にまとまり感が薄い。
伊坂作品にしては珍しいんだけれども。

最後の最後に、「そういうオチ!?」と突っ込みをいれてしまったことを、
ここに書いておこう。

「空飛ぶ広報室」/有川浩

実家にあったのでGW前半で読んできた。

舞台は航空自衛隊の広報部。
パイロットの夢をあきらめることになった空井が、広報部に来て、
そこで新しい一面に気付きつつ、さらに成長するという成長ストーリー。

有川さんの作品にしては、ラブコメ度は低め。
単行本で450ページともなるとなかなかの迫力ですが、
もちろん面白いのであっという間に読み切れます。

ちょうど今ドラマをやっていて、僕はドラマのほうが先になってしまいました。
よく原作を先に読むべきか、ドラマを先に見てもよいかという話がありますが、
今回は先にドラマを見始めてしまった者からすれば、
テレビ版もなかなかうまく構成されているように思いました。

小説のほうでは、物語中盤ぐらいですでに空井くんも稲葉さんも立ち上がっていくんだけど、
ドラマのほうではそうも簡単にはいきません。
その辺の作り方は、ドラマのほうがうまくできているように感じました。
ドラマは先が長いもんね。そうやって比較して読んでみるのもよいかと思います。

最後に東日本大震災後の松島基地という書き下ろしも付いていて、
ここはどちらかというとフィクションの形を借りた半ドキュメンタリーのような感じですが、
ここもドラマで触れてくれるのかな、と期待しています。

「PK」/伊坂幸太郎

久々に読書生活。帰国後の1冊目。

前後するストーリーが巧妙に入り組んでいるというパターンの、昔の伊坂らしい作品。
検索してみるといろいろとその構造を解説してくれているサイトも多い。

伊坂幸太郎の作品は、年代とともに作風が変わってきていて、
作品の構成も、テーマも少しずつ変化しているように感じる。