「神去なあなあ日常」/三浦しをん

三浦しをん先生の作品は初めてかな。
だけど、映画では「舟を編む」と「WOOD JOB!」を見てるんだよな。
その「WOOD JOB!」の原作小説。

映画は映画でとても良く出来ていたんだけど、
小説版では映画版でカットされたエピソードも含まれていて、
それが映画の映像として想像できるので、さらに楽しめる作品でした。

「マスカレード・イブ」/東野圭吾

「マスカレード・ホテル」が起こる前の、いくつかのストーリー。
ホテルを舞台に起こるちょっとした事件や、
冴え渡る洞察力で事件を解決する新人刑事、
そしてマスカレード・ホテルの事件を前に、
実は2人がニアミスしていたというストーリー展開は、
やはり東野圭吾、うまく作品をつなげるな、という感じ。

マスカレード・ホテルにつながるように話を作っているので、
ちょっと無理矢理感は否めないです。ストーリーのためのストーリーというか。
中身に深みのようなものは感じられませんが、
エンタメ小説としてはさっくり読める作品でした。

「下町ロケット」/池井戸潤

下町の町工場がロケットを作る?と言う話。
大きく分けると、前半は特許が大事という話、
中盤は特許販売のスタイルを取るか、あくまで工場として部品製作に力を注ぐか、という選択、
後半は会社が一致団結していく様子が描かれている。

そもそも日本の最先端テクノロジーには、
いつも下町の工場の“てだれ”と呼ばれる熟練工の職人技の力が活きていることが多いです。
テレビ番組でもよく取り上げられますよね。

また、特許の重要性についても、かなり薄っぺらいですが書いてあります。
この辺は、特許を実際に書いたことがある人からすると、
かなり薄っぺらい説明でしたが、特許の世界は奥が深いです。
そしてこのように特許で巨額なお金や、事業自体が頓挫することもあるので、
特許業務と言うのはテクノロジーの世界では必要不可欠な業務となっていますね。

総じて非常におもしろい作品だったと思います。

「戻る男」/山本甲士

タイムスリップを持ちかけられた男が本当に過去を変えた?
という体験談をした男が、本当にタイムスリップしたのかどうか確認しようとするが、うまくいかない。
しかも3回目のタイムスリップでは、塗り替えた過去が本当に新聞記事として残っているのだから、
疑いようがなくなってしまう。
しかし、そのあと継続して調査した男が突き止めた事実とは。

自分自身も読みながら、どういうトリックでこれを完結させるのだろうか、と思っていたのだが、
まさかそういうことだったとは、と思わされた。
特に3回目のタイムスリップの謎が、そういう風に作られるとは。

現実味がどこまである話なのかは分からないが、なかなか興味深く読むことができた。

「空飛ぶタイヤ」/池井戸潤

自動車会社のリコール隠しをテーマに扱った作品。
中小運送会社社長が大会社に戦いを臨み、何度も潰されそうになりながらも、
捨てる神あれば拾う神あり、いろいろな仲間に助けられながら徐々に自動車会社の闇に近づいていく。

面白かった。
二転三転する状況の中、「絶対にうちに非はない」という信念のもと、
諦めない社長の姿には感動するし、
同時に、大企業の象徴である自動車会社の組織のあり方は非常に分かるし、
今の社会をよく反映していると思った。

上下巻だったけど、あっという間に読めます。

「ルーズヴェルト・ゲーム」/池井戸潤

テレビドラマの原作。
ドラマ版はストーリーを増やすために、いろいろ加えられているけれど。

点の取り合いの末、8対7となる試合が一番面白い、というのが
このタイトルである「ルーズヴェルト・ゲーム」らしいけど、
原作を読む限りそこまでの感じはなかった。
野球チームの部分もそこまで綺麗に盛り上げられていないのも残念。
会社の経営と野球チームの存続が、どっちつかずになってしまっていてわかりにくかったような。

ドラマもいまいち盛り上がってないけど、
やっぱり半沢直樹シリーズのほうが面白いなと思いました。

「ロスジェネの逆襲」/池井戸潤

半沢直樹シリーズの第三弾。
昨日の出張の電車で一気に読みました。

覇権争いに巻き込まれるのではなく、自分の信じたところで信念を持ってやるべきことをする、
というのは、なかなか難しいことですが、
それを、痛快にも実現してくれるのが半沢直樹ですね。
しかもそれがトータルとしてうまくいく、勧善懲悪のストーリー展開も読んでいて心がすっとする。

最後に半沢直樹のセリフを通じて、そのバブル後の世代に向けたメッセージが出てくるのだが、
そこは我々の世代がしっかり受け止めていかなきゃいけないなあと。

第四弾が早くも楽しみな作品でした。

「世界地図の下書き」/朝井リョウ

親がいない子供たちの物語。
最後にランタンを飛ばすんだ、というところにつながっていく物語の部分が弱くて、
最後に向けて感情移入できなかった。

でも、子供たちは子供たちなりに強くなっていっているんだなあと、好意的に読めば読み取れるとは思いますが、
正直読み流し程度でした。すんません。

「駅物語」/朱野帰子

駅員さんが主人公の、駅を舞台にした作品。
駅の現実と、そこで起きる小さな物語が綴られている。

駅は特別な場所ではない、お客様に普段と同じように過ぎていってもらうのが一番だ、
といった内容の文章が出てくるんだけど、
この作品も最後まで淡々としていて、
悪くはないんだけど盛り上がりには欠けるかな、と思いました。

駅員さんの大変さに感謝、の1冊です。

「ガソリン生活」/伊坂幸太郎

今回もまた、ちょっと社会に疑問を投げかけるような内容になっていて、
僕が好きなタイプの作品。

結局、世の中に出てくる情報というのは、
いろいろな勢力に操作されているものであるということです。
これは間違いないことであるし、
それに抗う方法というのはなかなか難しいということも思い知らされる。

そういった意味でも、状況を客観的に見つめることができる人にならなくては。