「大金星」/水野敬也

 「夢をかなえるゾウ」の著者の本だったので読んでみた。パターン的にはゾウと同じようなストーリーで進む物語風の啓蒙書。ただ、啓蒙の内容が恋愛というテーマに置き換わっているのが特徴。多書を見てみると、恋愛テーマにしてたりしゃべくりをテーマにしたり、いろいろ書いてるんやねえ。

 いいところと悪いところが半々なので、両方書きます。いいところは、やっぱり姿勢は見習うべきだと思ったこと。「ゾウ」もそうだったけど、ここに書いてあることをすれば必ず成功するとは限らないが、ここに書いてあることをしなければうまくいきようがないという内容だと思うわけです。あとは自然にできるかどうか。

 ただ、これを読むと「ちょっとこれはなぁ」とか、「いくらなんでも現実離れしてる」とか思わざるを得ない。まさか著者が本当にこのことをやって恋愛がうまくいったとも思えないし。そうなってくると、逆に「ゾウ」も妄想だけでかかれていたりしないかと不安になってしまう。いいことが書いてあったのに、この本のせいで「ゾウ」まで価値が下がってしまうのはよくないですなあ(汗

「ホームレス中学生」/田村裕

 映画化もされたベストセラー。いまさら図書館で借りて読んだ。
 衝撃的な“ホームレス中学生”なのは前半ちょっとだけで、あとは家族について考えるような内容。
 文章はそれほどでもないけど、後半に出てくる先生と手紙をやりとりするシーンは、ものすごくいいシーンだった。あんなふうに、自分の考えを大事に伝えてくれる先生は、なかなかいないよ!

 まあミーハー心たっぷりで読んだ割にはよい話でした。

「面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則」/本田直之

 表題の通り。面倒くさがりな人が、うまくやるための法則が書いてある本。

 「最初に××しておくとあとが楽」ということはよくあると思うが、その手法についていろいろかかれている。いくつか例を挙げれば、「面倒くさいから メモをする」、「面倒くさいから 人のせいにしない」、「面倒くさいから 「お手本」を見つける」など。本田氏の他書にもかかれていたりするが、ルール化できる部分を徹底的にルール化するという内容も多い。
 僕はこの考え方は結構好きで、例えば僕のような仕事の場合、思考こそ価値ある仕事だと思うので、ルーチンワーク化できるものは余計なことをごちゃごちゃ考えたりする間もなく、誰もが共通に「こうする」と決められたルールを作ってしまうべきだと思うんだよね。ルールというとなんか破りたくなるかもしれないけど、そういう制限をかけるものではなくて、単に効率化を上げるための虎の巻といったニュアンス。

 30分もかからずに目を通せる本なので、是非読んでみては。これを活かすのはなかなか難しいけれど。

「レタスフライ」/森博嗣

 短編集。

 その中でも長編であるところの「ラジオが似合う夜」とかがおもしろい。というかほかの短編はダーク過ぎて辛い。
 とある国で不可解な事件に遭遇する男。すでに真相を知っているかのごとく、頭の良い女性警察官はヒントを出す。読み進めないと話の中身すら見えてこない森博嗣独特のスタイルにイライラしつつも、すっかり世界観に引き込まれるから不思議だ。ようやく最後の数ページで真相が明らかになり、余韻を残したまま物語は終わる、という不思議な話。

 まあ、森博嗣らしいといえばらしい感じです。

「本日、サービスデー」/朱川湊人

 タイトル読み。

 本屋でたまたま見かけてタイトルだけで読んでみた。短編集でした。タイトルにもなっている「本日、サービスデー」は一番のお勧め。何でも思い通りになる一日があったらどう過ごすのか、ちょっと考えてしまいます。最後はご都合主義のようにも思うけど、こういう話はご都合主義なぐらいがちょうどいいかも。
 ほかの作品は、この作家が得意とするらしいホラー風味です。最後の「蒼い岸辺にて」という作品が短いけれどメッセージ性は強い。言われなくても当たり前のことやけどね。

「エ/ン/ジ/ン」/中島京子

 不思議な話。世界観に入りきれなかったのもあるので、僕には合わなかったかな。いろいろ面白い展開は見えてきたのだが、結局は何が伝えたいのかわかりませんでした。
 書評などを見るに、1970年代の世界をうまく表現しているようなので、もっと大人の方は楽しめるのかもしれませんが。

「羊男のクリスマス」/村上春樹、佐々木マキ

 先輩からもらった本その2。村上春樹の作品を絵本にしたようなもので、そういう意味ではハルキ作品をまったくしらないので、これをどう評価してよいのか分かりませんでした。
 先輩いわく「私が読んだ中でベスト2作品」といって渡されたのですが、どういう意図でこれを送ってくれたのかは分かりかねてしまったのでした。

 もう少し春樹をしってから、改めて読んでみようと思ったのでした。

「パイロットフィッシュ」/大崎善生

 高校時代の先輩から贈られたこの本。出会ったことを大切にする、そんな考え方は僕も好きかも。

 読みやすいが、いろいろと考えさせられることが次々と出てくるストーリーでした。パイロットフィッシュというのは、次の魚がすみやすい環境を作るために、始めに水槽に入れられる魚のことらしい。切ないけど、そのパイロットフィッシュはいなくなっても、その影響をあとあとまでも受け続ける。それをマイナスに考えるか、ポジティブに考えるか。

「庵堂三兄弟の聖職」/真藤順丈

 真藤順丈といえば、地図男なんだけど、本屋で平積みになっていたので読んでみた。
 結論だけをいうと、面白い設定で、文章は読みにくい。あれ、地図男と変わらない感想だ(汗
 
 前回の地図男に続いて、今回は死体の骨や諸々を使って品物を作る仕事を生業とする兄弟の話。まさにホラーをまったく違う角度から書き下す技術には脱帽してしまう。
 一方で文章が読みにくいのは変わらず。もう少し、丁寧な文章だといいなあと思うんだけど、どうでしょう?

 でも、それを気にしなければかなり楽しめると思います。とにかく不思議な設定を楽しんでもらいたい作品です。

「蜂蜜のデザート」/拓未司

 グルメ系小説の第2弾。前作の「禁断のパンダ」で斬新なグルメミステリーというジャンルを確立した……の続編。今度はスイーツが事件の鍵を握ります。
 あらすじは、書けば書くほどコメディの相を呈してくるのでこれぐらいにしておきますが、これがなかなか面白いのです。それほどヒネったストーリー展開でもないし、書いてある食べ物の記述はへたなグルメ雑誌より想像をかきたてるしで、いったい何の小説なのかよくわからないですが、料理人ならではといった犯罪や思想があって、有無を言わせず楽しめると思います。