行列のスペクトル分解 [2007 東京大・理]

問題

 以下の問いに答えよ。
(1) 実数 a に対し、2次の正方行列 A , P , Q が、5つの条件
  A = aP + ( a + 1 ) Q , P2 = P , Q2 = Q , PQ = O , QP = O
をみたすとする。ただし O = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} である。このとき、
  ( P + Q ) A = A
が成り立つことを示せ。
(2) a は正の数として、行列 A = \begin{pmatrix} a & 0 \\ 1 & a+1 \end{pmatrix} を考える。この A に対し、(1)の5つの条件をすべて満たす行列 P , Q を求めよ。
(3) n を 2 以上の整数とし、 2 ≦ k ≦ n を満たす整数 k に対して、A_k = \begin{pmatrix} k & 0 \\ 1 & k+1 \end{pmatrix} とおく。行列の積
  AnAn-1An-2…A2
を求めよ。

イズミの解答への道

 問題自体は誘導に従って解いていけばよいので、難しいところはほとんど無い。(3)では(1)をヒントにこの P , Q の有用性を理解していればよい。これはテーマを知っているとよりスムーズだっただろう。
 本問のテーマは行列のスペクトル分解。詳しくは大学の線型代数などで学習するものなので、高校で理論立てて学ぶ機会はないですが、受験レベルの参考書であれば類題が1題は紹介されている問題でもあるので、慣れておくとよいでしょう。

解答

 (1)で与えられた条件を順に(a)?(e)とする。

(1) 条件式に(a)を代入すると、
   (左辺) = ( P + Q ) { aP + ( a + 1 ) Q }
        = aP2 + ( a + 1 ) PQ + a QP + ( a + 1 ) Q2
   ここで条件(b)?(e)を代入すると
        = aP + ( a + 1 ) Q = A
となることから、題意は示された。

(2) a は正の数より、 A の行列式
  det A = a ( a + 1 ) ≠ 0
であることから A には逆行列が存在し、
  ( P + Q ) A = A
の右から A-1 をかけて
  P + Q = E
となる(ただし E は2次の単位行列)。
  P + Q = E … (f)
  aP + ( a + 1 ) Q = A … (g)
として(f)と(g)を連立して、 P , Q について解くと、

\[ P = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ -1 & 0 \end{pmatrix} , Q = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 1 & 1 \end{pmatrix} \]

となる。このとき確かに条件を満たすことからこれが答えである。

(3) いま、適当な k , l , m , n について、条件(b)?(e)を用いることで、
  ( kP + lQ ) ( mP + nQ) = kmP2 + knPQ + lmQP + lnQ2
                = kmP + lnQ
となる(すなわち、xP + yQ の形のものを掛けたとき、その答えはそれぞれの P の係数を掛け合わせたものに P を掛けたものと、それぞれの Q の係数を掛け合わせたものに Q を掛けたものの和になる)。いま、
  Ak = kP + ( k +1 ) Q
であるから、

\begin{align*} &A_n A_{n-1} \cdots A_2 \\ &=n(n-1)\cdots 2 \cdot P + (n+1) n \cdots 3 \cdot Q \\ &=n!P + \frac{(n+1)!}{2} Q \\ &=\begin{pmatrix} \bm{n!} & \bm{0} \\ \displaystyle \bm{-n! + \frac{(n+1)!}{2}}  & \displaystyle \bm{\frac{(n+1)!}{2}} \end{pmatrix} \end{align*}

となる。

解説

スペクトル分解

 ある行列 A を、 A に対して決まる行列 P , Q を用いて
  A = αP + βQ
と表すことを行列 A のスペクトル分解という。この P と Q の性質、定め方が重要であり、P , Q は本問でも条件として課されていた条件
  P2 = P , Q2 = Q , PQ = O , QP = O
を満たさなければならない。 P , Q の性質、定め方については後述するとして、このスペクトル分解の重要な理由は、
  An = ( αP + βQ )n
    = ( αP )n + ( βQ )n  ← PQ = QP = O を用いた
    = αnPn + βnQn
    = αnP + βnQ    ← Pn = P , Qn = Q を用いた
となり、 n 乗計算が楽になるということにある。

P , Q をどのように求めるか?

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