命題の真偽|引っ掛け問題に注意!

命題とは

 命題とは、よく見る形でいえば、
  A ならば B
といった形式をした文章のことです。数学なのに文章を勉強するというのはちょっと不思議な感覚です。
  x = 2 ならば 5x = 10
  x = 3 ならば x + 3 = 5
  √3 は 無理数
  マツ は 針葉樹
 上に書いた4つの文章は、いずれも命題だといえます。後半の2つのように、「ならば」ではなく「は」という助詞でつながるものもあります。

 

 さて、上の4つをみると、2つ目をみたときに「あれ?」と思う人もいるでしょう。 x = 3 のときに、 x + 3 は 5 にはならないからです。「間違えているじゃないか!」という人もいるでしょう。
 そこも1つのポイントです。命題とは「 A ならば B 」のような一つの文章のことであり、それが正しくても間違っていてもよいのです。そして、その命題が正しいとき、「命題は真(しん)である」といい、命題が間違っているとき、「命題は偽(ぎ)である」と表現します。

 

 では、上にあげた4つの命題が「真」なのか「偽」なのか、それぞれ見てみましょう。
 1つ目は、真ですね。実際に右の式の x に x = 2 を代入してみると、 5×2 = 10 で式が成立します。
 2つ目は、偽です。上で見たとおりですが、右の式に x = 3 を代入すると、 x + 3 = 6 となり式が成立しないからです。
 3つ目は、先に答えを言うと真です。√3は無理数です。ただ、√3が無理数であることの証明には背理法というテクニックが必要でして、これについては別のページで紹介しております。
 4つ目は数学っぽくありませんが、これもれっきとした命題です。植物学上、マツは針葉樹に分類されるので、「真」といえます。

 最後に、数学的な記号の紹介です。「AならばB」という命題を数学では、
  A ⇒ B
とあらわします。日本語と矢印のイメージが近いので、それほど迷うことはありませんね。

命題の真偽は引っ掛けに注意!

 テストや入試の出題では、この真偽判断において、あの手この手で引っ掛けようとしてきます。例題を出しますので、「引っ掛かってたまるか」という気持ちで解いてみてくださいね。

命題「 x2 = 4 ならば x = 2 」は真か偽か。

 はい出ました。答えは偽です。「え、あってるんじゃない?」と思ったあなた、「引っ掛かってたまるか」という思いがたりません(笑)。
 今回の問題では、 x = -2 を見落としていることがポイントです。 x2 = 4 だからといって x = 2 と決まったわけではなくて、 x = -2 の可能性もあります。ですから、この命題は「偽」なのです。
 「AならばB」ということは、「Aであれば“必ず”Bである」「AであるものはすべてBである」という意味だと考えておくと良いでしょう。

 もう1問見てみましょう。

命題「 ac = bc ならば a = b 」は真か偽か。

 「引っ掛かってたまるか」の気持ちでどれだけ見ても、正しいように見えますね。しかし、これも偽です。たとえば、 a = 3 , b = 5 で、 c = 0 のときはどうでしょうか。 ac = bc = 0 ですが、a = b ではありません。

 今あげた2つは引っ掛けの王道2つです。2乗を外す問題に気をつけろ、 0 を掛けたり割ったりする問題に気をつけろ、といったことでしょうか。

 ところで、ここで偽であることを示すために、命題を満たさない例をだしました。1つ目の例の「 x = -2 」や2つ目の例の「 a = 3 , b = 5 , c = 0 」のことです。このようなもののことを反例といいます。反例が存在する命題は偽であるということができます。

対偶

 命題の真偽の問題を解くときに、どうしても説明しなければならないテーマが「対偶」です。
「 A ならば B 」という命題に対して、「(Bでない)ならば(Aでない)」という命題のことを(元の命題の)対偶といいます。
 たとえば、
  「 x2 = 4 ならば x = 2 」の対偶は、「 x≠2 ならば x2≠4 」
となります。

 どうしてこんなややこしいものをわざわざ名前を付けて考えなければならないの? と思う方もいるかと思います。実は、

元の命題とその対偶の命題は、真偽が一致する

という定理があるからです。(定理の証明も重要ですから、必ず教科書を証明を確認してください。)
 元の命題の真偽がぱっとみて分からない場合に、対偶を考えるとスムーズに真偽が分かる場合があります。このような問題のときに使えるので、覚えておきましょう。 

自然数nに対して、n2 が偶数ならば、 n は偶数である

 普通に解くと、次のようになります。

解答1

  k を自然数とすると、

  • n = 2k のとき、n2 = 4k2 は偶数
  • n = 2k – 1 のとき、n2 = 4k2 – 4k – 1 は奇数
 よって、 n2 が偶数という条件を満たすのは n が偶数のときだけであるから、元の命題「自然数nに対して、n2 が偶数ならば、 n は偶数である」は正しい。よって真。■

 のようになります。なかなかまどろっこしいですね。

 一方で、問題の命題の対偶は、
  自然数 n に対して、n が奇数ならば n2 は奇数である
となり、この命題の真偽を考えるのは簡単です。

解答2

  n が奇数のとき、 n = 2k – 1 ( k は自然数)とおけて、このとき、
  n2 = 4k2 – 4k – 1
が奇数になるので、対偶は真。よってもとの命題も真である。■

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