背理法|「そうでないこと」を証明する

背理法とは

 背理法という証明方法があります。簡単に言うと、「あることを証明するために、そうではないとしたら、と仮定して論証を進めるとどこかで矛盾が生じることを利用し、矛盾が生じると言うことは仮定が間違っていた、よってもともと証明したいことが証明される」という証明方法です。

 と文章で書いてもわけがわかりません。次のような例はどうでしょうか。
 あなたが探偵だったとします。ある離れ小島に集められた人間が次々と殺される殺人事件が起き、あなたは犯人を探しています。さてあなたは、どのように犯人を見つけるのが良いでしょうか。
 たとえばAさんに目をつけます。Aさんが犯人ではないか、と疑うわけです。そして四六時中Aさんを監視します。しかしBさんが殺されてしまったとしましょう。そうすると、Aさんにはアリバイがあるから犯人ではないことが証明されます。
 この場合、Aが犯人ではないかと仮定したところ、Aさんが犯人ではありえない自体が起こったため、結果としてAさんが犯人ではないことが証明されます。このような感じです。

 実際の推理小説は、もっと複雑に出来ているので、もしAさんをずっと監視していたとしても、Aさんが犯人の可能性もありますが、数学はもっと単純なので、矛盾があれば仮定がまちがっていたと結論付けてよいのです。

背理法の例

 背理法を使った証明の例は、とにかく\sqrt{3}が無理数であることの証明に限ります。数多く大学入試でも出題されていますが、ここでは\sqrt{3}が無理数であることを、背理法によって証明してみましょう。(「無理数って何?」という方は、こちらのページを先に学習してください。)

例題
 \sqrt{3}が無理数であることを証明せよ。

【解答】
 \sqrt{3}が有理数だと仮定する。つまり\sqrt{3} = \frac{q}{p}( p , q は互いに素な自然数)と置ける。
 仮定より、

    \[ \sqrt{3}p = q \]

より、
  3p2 = q2 ……(a)
であるから、
  q2 は 3 の倍数
である。後で証明するが、
  q2 が 3 の倍数 ならば、 q は 3 の倍数 …※
であるから、 q = 3k ( k は自然数)とおける。すると、(a)式より、
  3p2 = 9k2
  p2 = 3k2
より、
  p2 は 3 の倍数
であり、
  p2 が 3 の倍数 ならば、 p は 3 の倍数
であるから、 p = 3l ( l は自然数)とおける。
 このとき、 p = 3l , q = 3k より p と q が互いに素であることに反する。
 以上より、背理法により、\sqrt{3}が無理数であることが証明された。

(※の証明)
 対偶を証明する。 q が3の倍数でないとき、 q = 3a ± 1 とおけ、このとき、 q2 は、
  q2 = 9a2 ± 6a + 1
となり q2 も3の倍数ではない。よって※は示された。■

 どうでしょうか、見事に「互いに素であること」を利用して矛盾を導きました。
 最後の落とし方が分かっているからこそ、冒頭で「 p , q は互いに素な自然数」のようにフリを付けることができます。冒頭では推理小説を例に出しましたが、このフリとオチの関係は漫才のようなところもあります。

 背理法の照明のパターンはかなり似たものが多いので、今回の例題の証明はぜひ丸暗記してもらいたいです。もちろん一文一句覚えろということではありません。初めに「有理数であると仮定する」こと、そして「pとqが互いに素である」とフリを利かすこと。ここを押さえて、流れを覚えてしまうまで何度も練習してみてください。

 最後に、同じような解き方で解くことができる入試問題を紹介します。

背理法 [2015 大阪大・理]
以下の問いに答えよ。<br /> (1) √2 と <sup>3</sup>√3 が無理数であることを示せ。<br /> (2) p , q , √2 p + <sup>3</sup>√3 q が全て有理数であるとする。そのとき、 p = q = 0 であることを示せ。

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