3辺が 5 , 12 , 13 の直角三角形の最鋭角の角度 [2007 早稲田大・教育]

問題

 3辺の長さが 5 , 12 , 13 である三角形において、長さが 12 , 13 である2辺によってはさまれる角の大きさをθとする。このとき n°< θ < ( n + 1 )°となる整数 n は   である。

イズミの解答への道

 三平方の定理を学んだ中学生のときからお馴染みの 5 , 12 , 13 の直角三角形の最鋭角の角度θは大体何度か、と聞かれている。
 とりあえず手のつくところから進めて行くと、2θが45度ぐらい(4θが90度ぐらい)ということまではたどりつく。しかし、そこから先への一歩が難しい。
 解答は一般に予備校などで公開されている「45度との誤差が1度以下である」ことを示す方法を紹介するが、ここで思いついてもらいたいのは、π > 3.05 を示した“あの”問題の方法である。これは別解で示す。
 いろいろな解法が考えられる良い難問。

解答

 この三角形は、
   52 + 122 = 132
を満たすから、長さが 5 , 12 である2辺にはさまれる角が直角であるような直角三角形である。いま、

    \[ \tan \theta = \frac{5}{12} \]

であり、

    \[ \tan 2\theta = \frac{2 \tan \theta}{1- \tan^2 \theta} = \frac{\frac{10}{12}}{1- \frac{5^2}{12^2}} = \frac{120}{119} > 1 \]

であることから、2 \theta > 45^{\circ}である。よって、

    \[ 2\theta = \frac{\pi}{4} + \alpha \qquad \left( 0 < \alpha < \frac{\pi}{2} \right) \]

とすると、

    \[ \tan \left( \frac{\pi}{4} + \alpha \right) = \frac{120}{119} \]

がなりたつ。これに加法定理を用いて、

    \[ \frac{1+\tan \alpha}{1 - \tan \alpha} = \frac{120}{119} \]

を tanα について解いて、

    \[ \tan \alpha = \frac{1}{239} \]

となる。0 < \alpha < \frac{\pi}{2}の範囲では、

    \[ \alpha < \tan \alpha \]

であるから、

    \[ 0 < \alpha < \tan \alpha = \frac{1}{239} \]

であり、このαを度数法に直すと、

    \[ 0^{\circ} < \alpga = \left( \frac{1}{239} \cdot \frac{180}{\pi} \right)^{\circ} < 1^{\circ} \]

となりαは度数法で1度未満である。よって、

    \[ 45^{\circ} < 2\theta < 46^{\circ} \]

すなわち、

    \[ 22.5^{\circ} < \theta < 23^{\circ} \]

だから、 n = 22 である。

解説

別解

 解答で紹介した方法は、たまたま2θが45度に近い角度であったことがポイントである。しかし、nθがよく知られている三角比の値に近い角度にならない場合には、この方法は使えない。
 そこで、次の別解である。これを思いつく理由は、

円周率が3.05より大きいことの証明 [2003 東京大・理]
 円周率が3.05より大きいことを証明せよ。 [2003 東京大・理] イズミの解答への道  そもそも円周率とはなんだったか? という定義を知らないと書き出しから困ります。解答には円周率の定義を書くことも必要となります...

の問題で行う上手な評価である。上の問題も必ずチェックしてもらいたい。

【別解】
 与えられた三角形を図のように△ABCとおき、求める角度を弧度法表示の x [ rad ] とする。
 図のように、長さ 12 の辺を 1 伸ばして、中心角θ、半径 13 の扇形ACDを考えると、このとき弧CDの長さは定義から 13x である。
2007_2_01
 さらに、図のように線分CDの中点を M とし、直線AMと弧CDの交点を N とし、Nを通り線分CDにに平行な線分EFを引くと、△ACD ∽ △AFEとなる。この相似比を考えよう。

    \[ \text{CD} = \sqrt{\text{CB}^2+\text{BD}^2} = \sqrt{5^2+1^2} = \sqrt{26} \]

であるから、

    \[ \text{MD} = \frac{\sqrt{26}}{2} \]

である。△AMDは直角三角形だから、

    \[ \text{AM} = \sqrt{13^2 - \left( \frac{\sqrt{26}}{2} \right)^2} = \cdots = \frac{5}{2}\sqrt{26} \]

である。
 AN = 13
であるから、△ACD と △AFE の相似比は

    \[ \frac{5}{2}\sqrt{26} : 13 = 5\sqrt{26} : 26 = 5 : \sqrt{26} \]

である。
 さて、扇型ACDの面積 S は、

    \[ S = \frac{1}{2} rl = \frac{1}{2} \times 13 \times 13x = \frac{169}{2}x \]

であり、これは△ADCより大きく、△AEFより小さい。

    \[ \triangle \text{ADC} = 13 \times 5 \times \frac{1}{2} = \frac{65}{2} \]

であり、

    \[ \triangle \text{AEF} = \frac{65}{2} \times \left( \frac{\sqrt{26}}{5} \right)^2 = \frac{13 \cdot 5}{2} \times \frac{13 \times 2}{5^2} = \frac{13^2}{5} \]

であるから、

    \[ \frac{65}{2} < \frac{169}{2}x < \frac{169}{5} \]

すなわち、

(a)   \[ \frac{5}{13} < x < \frac{2}{5}  \]

である。
 この x を度数法の θ° に直して考える。(a)式は、

    \[ \frac{5}{13} \times \frac{180}{\pi} < \theta < \frac{2}{5} \times \frac{180}{\pi} \]

ということであり、

    \begin{align*} \frac{5}{13} \times \frac{180}{3.142} &= 22.0339\cdots \\ \frac{2}{5} \times \frac{180}{3.14} &= 22.929\cdots \\ \end{align*}

であるから、

    \[ 22.03 < \theta < 22.93 \]

であることが求められる。よって、 n = 22 である。

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