複素数平面と漸化式 [2005 北海道大・理]

 複素数 an ( n = 1 , 2 , … ) を次のように定める。

    \[ a_1 = 1+i , \quad a_{n+1} = \frac{a_n}{2a_n - 3} \]

ただし、 i は虚数単位である。このとき以下の問いに答えよ。
(1) 複素数平面上の3点 0 , a1 , a2 を通る円の方程式を求めよ。
(2) すべての an は(1)で求めた円上にあることを示せ。

[2005 北海道大・理]

イズミの解答への道

 (1)では、漸化式で与えられた3点が円上にあることを示し、(2)ではその漸化式で与えられるすべての点が(1)の円上にあることを示す、という流れ。(1)は具体的に計算をし、(2)は数学的帰納法で証明するのがポイント。
 適当な数列ではそのようなことにはならないが、問題で与えられる数列は「必ず円上にあるように」仕組まれている数列なので、がむしゃらに計算をしてもうまく収まるようにできている。実際に(2)の後半でそれを感じてもらいたい。

解答

(1) 与えられた式より、

    \begin{align*} a_2 &= \frac{a_1}{2a_1-3} = \frac{1+i}{2(1+i)-3} \\ &=\frac{1+i}{-1+2i} =\frac{1}{5}(1-3i) \end{align*}

となる。
 以下は平面座標で考える。原点、 ( 0 , 0 ) 、\displaystyle \left( \frac{1}{5} , - \frac{3}{5} \right)を通る、中心 ( p , q ) 、半径 r の円は、

    \[ \begin{cases} p^2 + q^2 = r^2 & \text{$\cdots$(a)} \\ ( 1-p)^2 + (1-q)^2 = r^2 & $\cdots$ \text{(b)}  \\ \displaystyle \left( \frac{1}{5} - p \right)^2 + \left( -\frac{3}{5} - q \right)^2 = r^2 &\text{$\cdots$(c)}\end{cases}  \]

を満たす。(b)式、(c)式はそれぞれ

    \begin{align*} &(p^2 - 2p + 1) + ( q^2 - 2q +1 ) = r^2 & \cdots\text{(b')} \\ &\left( p^2 - \frac{2}{5}p + \frac{1}{25} \right) + \left( q^2 - \frac{6}{5}q + \frac{9}{25} \right) = r^2 & \cdots\text{(c')} \end{align*}

である。(b’)-(a)より、
  -2p – 2q +2 = 0
すなわち、
  p + q = 1 …(d)
であり、同様に(c’)-(a)より、

    \[ -\frac{2}{5}p + \frac{1}{25} + \frac{6}{5}q + \frac{9}{25} = 0 \]

すなわち、
  p – 3q = 1 …(e)
であり、(d)と(e)の連立方程式を解いて、
  p = 1, q = 0
を得る。このとき r = 1 であるから、求める円は ( 1 , 0 ) を中心とした半径 1 の円。複素数平面では、求める円の方程式は、
  | z – 1 | = 1
である。

(2) すべての n について、
  | an – 1 | = 1  …(※)
が成り立つことを数学的帰納法によって示す。
(i) n = 1 のときは(1)で示したとおり成立する。
(ii) n = k のとき(※)が成立すると仮定すると、
  | ak – 1 | = 1
 ⇔| ak – 1 |2 = 1
 ⇔|a_k|^2 - a_k - \overline{a_k} = 0 …(f)
が成り立つ。
 いま、

    \begin{align*} \left| a_{k+1} - 1 \right| &= \left| \frac{a_k}{2a_k -3} -1 \right| \\ &=\left| \frac{-a_k +3}{2a_k - 3} \right| = \frac{| a_k - 3 |}{|2a_k -3|} \end{align*}

が成り立つ。ここで、

    \begin{align*} |a_k -3 |^2 &= |a_k|^2 - 3 a_k - 3 \overline{a_k} + 9 \\ &=-2a_k - 2\overline{a_k} + 9 \\ |2a_k -3|^2 & = 4|a_k|^2 - 6 a_k - 6\overline{a_k} + 9 \\ &=-2a_k - 2\overline{a_k} + 9 \end{align*}

となることから、 | ak – 3| = |2ak | であるから、

    \[ \left| a_{k+1} - 1 \right| = 1 \]

となり、 n = k + 1 のときも(※)が成り立つ。
 以上、(i)、(ii)より数学的帰納法によってすべての n によって(※)が成り立つことが示された。
 よって、すべての anは中心 1 、半径 1 の円周上にあることが示された。

解説

(2)の別解

 数学的帰納法で示すところは同じ。(ii)で n = k のときに成立すると仮定すると、
  | ak – 1 | = 1
が成り立つ。
 いま、

    \[ a_{n+1} = \frac{a_n}{2a_n-3} \]

の両辺の逆数を取って

    \[ \frac{1}{a_{n+1}} = \frac{2a_n-3}{a_n} = 2 - \frac{3}{a_n} \]

となることから、

    \[ \frac{1}{a_n} = \frac{1}{3} \left( 2 - \frac{1}{a_{n+1}} \right) = \frac{1}{2} \cdot \frac{2a_{n+1}-1}{a_{n+1}}  \]

となるので、

    \[ a_n = \frac{3 a_{n+1}}{2a_{n+1} -1} \]

が成り立つ。
 | ak – 1 | = 1 であったから、

    \[ \left| \frac{3a_{k+1}}{2a_{k+1} - 1} - 1 \right| = 1 \]

が成り立ち、

    \begin{align*} \left| \frac{a_{k+1} +1}{2a_{k+1} - 1} \right| &=1 \\ | a_{k+1 }+1 | &= | 2a_{k+1} - 1 | \\ | a_{k+1}+1 |^2 &= | 2a_{k+1} - 1 |^2 \\ | a_{k+1} |^2 + a_{k+1} + \overline{a_{k+1}} +1 &= 4|a_{k+1}|^2 - 2a_{k+1} - 2\overline{a_{k+1}} +1 \\ 3|a_{k+1}|^2 - 3a_{k+1} -3 \overline{a_{k+1}} &= 0 \\ |a_{k+1}|^2 - a_{k+1} - \overline{a_{k+1}} &= 0 \\ |a_{k+1} - 1|^2 &= 1 \\ |a_{k+1} - 1| &= 1 \end{align*}

となる。よって、 ak+1 も 中心 1 、半径 1 の円周上にあることが示される。以下は同じ。

類題

 この問題を解けるようになると、次の東大の問題も同じように解くことができます。

 複素数平面上の点 a1 , a2 , … , an , … を

    \[ \begin{cases} a_1 =1 , a_2 = i \\ a_{n+2} = a_{n+1} + a_n \quad ( n = 1 ,2 ,\cdots) \end{cases} \]

により定め

    \[ b_n = \frac{a_{n+1}}{a_n} \quad ( n = 1 ,2 ,\cdots) \]

とおく。ただし、 i は虚数単位である。
(1) 3点 b1 , b2 , b3 を通る円Cの中心と半径を求めよ。
(2) すべての点 bn ( n = 1, 2, … ) は円Cの周上にあることを示せ。

[2001 東京大・理]

【解答】
(1) a1 = 1 , a2 = i , a3 = 1 + i , a4 = 1 + 2i
であるから、

    \[ b_1 = i, b_2 = \frac{1+i}{i} = 1 - i , b_3 = \frac{1+2i}{1+i} = \frac{1}{2}(3+i) \]

である。
 以下は平面座標上で考える。中心 ( p , q ) 、半径 r の円が、3点 ( 0 , 1 ) , ( 1 , -1 ) , \displaystyle \left( \frac{3}{2} , -\frac{1}{2} \right)を通るとき、

    \[ \begin{cases} p^2 + (1-q)^2 = r^2  \\ (1-p)^2 + (1+q)^2 = r^2  \\ \displaystyle \left( \frac{3}{2} -p \right)^2 + \left(\frac{1}{2}-q \right)^2 = r^2 \end{cases} \]

であり、これを計算して解くと、 \displaystyle p = \frac{1}{2} , q = 0であり、このとき\displaystyle r = \frac{\sqrt{5}}{2} となるので、
  求める円Cの中心は \displaystyle \bm{\frac{1}{2}}、半径は \displaystyle \bm{\frac{\sqrt{5}}{2}}
である。

(2) すべての点 bn ( n = 1, 2, … ) は円Cの周上にあることを数学的帰納法によって示す。
(i) n = 1 のとき
 (1)より、 b1 は(1)より円Cの周上にある。
(ii) n = k のとき題意を満たすと糧する。つまり、 bk は円Cの周上にあるとすると、

    \[ \left| b_k - \frac{1}{2} \right| = \frac{\sqrt{5}}{2} \]

が成り立つ。これより、

(a)   \[ |b_k|^2 = \frac{1}{2} b_k + \frac{1}{2} \overline{b_k} + 1  \]

が成り立つ。

 次に、 n = k + 1 のときを考える。漸化式より、

    \[ b_{i+1} = \frac{a_{i+2}}{a_{i+1}} = \frac{a_{i+1}+a_i}{a_{i+1}} = 1 + \frac{a_i}{a_{i+1}} = 1+ \frac{1}{b_i} \]

が成り立つ。いま、\displaystyle \left| b_{k+1} - \frac{1}{2} \right|の値を考えると、

    \[ \left| b_{k+1} - \frac{1}{2} \right| = \left| b_{k} + \frac{1}{2} \right| = \frac{2+b_k}{2b_k} \]

であり、(a)を用いると、

    \begin{align*} | 2 + b_k |^2 &= |b_k|^2 + 2b_k + 2\overline{b_k} + 4 \\ &= \frac{5}{2}b_k + \frac{5}{2} \overline{b_k} + 5 \\ 2|b_k|^2 &= 4 \left(  \frac{1}{2} b_k + \frac{1}{2} \overline{b_k} + 1 \right) \\ &= 2b_k + 2 \overline{b_k} + 4 \end{align*}

となり、

    \[ \left| \frac{2 + b_k}{2b_k} \right|^2 = \frac{5}{4} \]

すなわち、

    \[ \left| \frac{2 + b_k}{2b_k} \right| = \frac{\sqrt{5}}{2} \]

である。よって、

    \[ \left| b_{k+1} - \frac{1}{2} \right| = \frac{2+b_k}{2b_k} = \frac{\sqrt{5}}{2} \]

となるので、 bk+1 も円Cの周上にある。
 (i)、(ii)より、すべての点 bn ( n = 1, 2, … ) は円Cの周上にあることが数学的帰納法により示された。

※この問題の(2)も別解で示したように、 bk = の形に変形して解くことも可能である。これも各自試してもらいたい。

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