問題
すべての実数で定義され何回でも微分できる関数 f ( x ) が f ( 0 ) = 0 , f ‘ ( 0 ) = 1 を満たし、さらに任意の実数 a , b に対して 1 + f ( a ) f ( b ) ≠ 0 であって、
を満たしている。
(1) 任意の実数 a に対して、 であることを証明せよ。
(2) y = f ( x ) のグラフは x > 0 で上に凸であることを証明せよ。
イズミの解答への道
(1)から難しい。類題経験がモノをいうタイプの問題です。連続関数の値域が制限されるということと、f ( 0 ) で値が定義されていることを考えれば、 f ( x ) = 1 , – 1 となり得ない(このような式を満たす x が存在しない)ことを示せば、 – 1 < f ( a ) < 1 であることが証明できます。
解答
(1) f ( x ) = 1 あるいは f ( x ) = -1 を満たす x が存在しないことを背理法によって証明する。
f ( a ) = 1 を満たす a が存在するとすると、
となり、 f ( 0 ) = 0 に矛盾するため、 f ( a ) = 1 となる a は存在しない。同様に f ( a ) = -1 を満たす a を仮定しても矛盾するため、 f ( a ) = -1 を満たす a は存在しない。
よって、 f ( x ) = 1 あるいは f ( x ) = -1 を満たす x は存在しない。いま、 f ( 0 ) = 0 であることと、 f ( x) が(微分可能であることから)連続関数であることから、任意の実数 a に対して、 – 1 < f ( a ) < 1 である。
(2)
である。ここで(1)の結果より、
1 – { f ( x ) }2 > 0
であるから、
f ‘ ( x ) > 0
である。よって、 f ( 0 ) = 0 と f ‘ ( x ) > 0 であることから、 x > 0 において
f ( x ) > 0
である。
f ‘ ( x ) = 1 – { f ( x ) }2
をさらに x で微分して、
f ” ( x ) = – 2f ( x ) f’ ( x )
となるから、 x > 0 において、
f ’’ ( x ) < 0
であることから、与えられた関数 f ( x ) は x > 0 において上に凸であることが示された。
解説
奇関数であることを示す
有名な関数方程式であるので、同じ関数についてさまざまな問題が出題されている。「すべての x で微分可能であること」は、
f ‘ ( x ) = 1 – { f ( x ) }2
ということから示され、「 f ( x ) は増加関数であること」は、
1 – { f ( x ) }2 > 0
ということから示される。((1)で示したとおり、すべての x について – 1 < f ( x ) < 1 。)
最後ににもう1つ、よく出題されるポイントとして、「この関数が奇関数であること」を示しておこう。これは、a = x = -b を代入すると、
より、
f ( x ) = f ( -x )
となるので、 f ( x ) は奇関数であることが示された。
題意を満たす f ( x ) を求める
(2)で示した微分方程式
f ‘ ( x ) = 1 – { f ( x ) }2
を解くことで、題意を満たす f ( x ) を求めることができる。 y = f ( x ) とおいて、変数分離形として変数を分離すると、
となるので、両辺を積分して、
となる。これを y について解くと、
となる。 f ( 0 ) = 0 であることから、 C = 1 となるので、
となる。
これは双曲線関数と呼ばれるもののうちの tanh x (ハイパボリックタンジェント)という関数である。双曲線関数には三角関数と同じような性質があり、今回の関数方程式は tanh x の加法定理であり、三角関数の tan x の加法定理と似ていることも分かる。
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