問題
次のように、2つの試行を連続して行った結果それぞれ事象Aと事象Bが起こった。それぞれについて、2つの試行が独立かどうか答えよ。
(1) 赤い玉が4個、白い玉が4個入った袋がある。
A:玉を1個取り出したところ白だった。
B:最初の試行で取り出した玉を戻した後、1個取り出したところ白だった。
(2) 30人のクラスがある。
A:無作為に選んだXさんの誕生日が1月1日である。
B:その次に無作為に選んだYさんの誕生日が1月1日である。
(3) 5つの扉があり、それぞれの後ろに猫が一匹いる。猫は黒猫が3匹、白猫が3匹であり、その場から動かないものとする。
A:1つ目の扉を開けたところ、黒猫がいた
B:1つ目の扉を閉じた後、別の扉を開けたところ、白猫がいた。
イズミの解答への道
2012年度からの現行教育課程では数学Aで学ぶ「条件付き確率」を理解していますか、という問題。
独立試行とは、2つ目の試行が1つ目の試行(の結果)の影響を受けないということである。それが分かっていれば、解答のように計算をせずに、別解のように解けるだろう。そして、受験を受ける際にはそのようになってもらいたい。
なお、(2)の問題文はやや不明瞭である。事象Bにおいて「無作為に」選んだにもかかわらず、一人目と違うYという名前がついているため、Xとは異なる29人から選ぶという意味なのか、Xも含めた30人から選ぶ、ということなのかがわかりづらいからである。ただしこれは答えには関係ない。Xさんを含もうと含まなくとも、無作為に選んだその人が1月1日である可能性はいずれにせよ 1/365 となるからである。
解答
事象Aが起こる確率を P ( A ) , 事象Bが起こる確率を P ( B ) 、事象Aと事象Bが同時に起こる確率を、 P ( A ∩ B ) とする。事象Aと事象Bが独立であるとは、
P ( A ) ・ P ( B ) = P ( A ∩ B )
を満たすことである。以下ではこれを満たすかどうかを考える。
(1) であり、 である。また、
より、 P ( A ) ・ P ( B ) = P ( A ∩ B ) を満たすので、独立である。
(2) 30人というのは関係ない。Xさんが1月1日生まれである確率は、365分の1である。次に無作為に選んだ人間についても(それがXさんを含んで無作為に選ばれたとしても、Xさんを含まずに無作為に選んだとしても)、その人の誕生日が1月1日である確率はやはり365分の1である。
よって、であり、
より、 P ( A ) ・ P ( B ) = P ( A ∩ B ) を満たすので、独立である。
(3) P ( A ) , P ( B ) はそれぞれ黒猫が入る確率、白猫が入る確率だから、である。ところで、 P ( A ∩ B ) は、
であり、P ( A ) ・ P ( B ) ≠ P ( A ∩ B ) となり、独立ではない。
解説
■別解?独立の意味を考える
冒頭で述べたように、独立試行の意味が分かっていればこの問題は計算する必要はない。(1)においては玉を戻しているので、事象Aと事象Bの状況はまったく同じである。つまりBの事象には事象Aは影響しないので、独立と判断できる。
(2)は冒頭に触れたように文章に悩まされるところはあるが、いずれにせよ無作為に選んだある人の誕生日が決まった日になる確率は、どの順番で誰を省いた状態で無作為に選んでも 1/365 に決まる。
しかし、(3)だけは条件が違う。事象Bには「別の扉を開ける」と書いてあり、事象Aの影響を受けながら事象Bが起こるということを示している。この場合はよっぽど特殊な状況がない限り独立にはなり得ない。
このような感覚をもってこの問題を解けるようになれば、数学的思考が身についていると言えるだろう。
コメント