すべての正の整数 n に対して 5n + an + b が 16 の倍数となるような 16 以下の正の整数 a , b を求めよ。
[1997 一橋大]
イズミの解答への道
初めのとっかかりが難しい問題でしょうか、とりあえずメスを入れるためにも、試しに n = 1 , 2 あたりを試してみると、
n = 1 のとき、5 + a + b = 16k
n = 2 のとき、25 + 2a + b
となるが、 n = 1 のときの値を n = 2 に代入すると、
25 + 2a + b = 16k + 20 + a
となるので、「 20 + a も16の倍数でなければならない」ということがわかる。
これにより、 a = 12 であることが“必要”であり、 n = 1 のときの式から、
5 + 12 + b = 17 + b が 16 の倍数
であることから b も b = 15 であるのだろう、と分かる。
しかし、ここで a = 12 , b = 15 であると終わらせてはいけない。ここで得た a = 12 , b = 15 というのは n = 1 , 2 のときだけを考えて、 n = 1 , 2 で条件を満たすとすれば『どうしても必要になる』ということから得られた解であり、 n ≧ 3 でも満たすとは限らないからです。
とはいえ、大きなヒントを得ることができているのは事実である。このように具体的な条件から「どうしても必要になる」条件を絞ることを「必要条件から範囲を絞る」と呼ぶ。範囲を絞っただけなので、それで終わりにせず最後の検証をする必要があるのである。
このことを理解する良い問題である。
解答
n = 1 のとき 16 の倍数だから、
5 + a + b = 16k …(a)
とおける。次に n = 2 のとき、
25 + 2a + b = 16k + 20 + a
となり、 20 + a も 16 の倍数であることが必要である。いま、 a ≦ 16 より、a = 12 が必要。
次に(a)式に a = 12 を代入すると 17 + b であり、これも16の倍数なのだから b = 15 が必要である。
つまり、a = 12 , b = 15 が必要である(これが必要条件)。
次に、 a = 12 , b = 15 のとき、すなわち 5n + 12n + 15 がすべての n に対して16の倍数であることを示す(十分性の確認)。
いま、
an = 5n + 12n + 15
とおき、「すべての n に対して an が16の倍数である(※)」ことを数学的帰納法によって示す。
(i) n = 1 のとき、 a1 = 5 + 12 + 15 = 32 より(※)は満たされる。
(ii) n = k のときに(※)が成り立っているとすると、m を整数として
ak = 5k + 12k + 15 = 16m
とおくことができる。このとき、
ak+1
= 5k+1 + 12 ( k + 1 ) + 15
= 5・5k + 12k + 27
= 5 ( 16m – 12k – 15 ) + 12k + 27
= 16 ( 5m – 3k – 3)
となり、 5m – 3k – 3 は整数より、 ak+1 も16の倍数であることが示された。
(i)、(ii)より、数学的帰納法によって(※)が示された。
以上より、もとめる a , b は、 ( a , b ) = ( 12 , 15 ) である。
研究
必要条件から範囲を絞る
この問題で重要なのは、まず試しにやってみたところから必要条件を導き、その答えで十分だということを示す(これが十分条件)方針を使って解くというところです。このような方針を立てて解かなければならない問題は他にもいくつかあります。論理的にどこまで答えれば十分か、しっかり考えながら問題を解くクセをつけましょう。
この手の類題も多いので、いくつか見て行きましょう。上の問題でピンと来なかった人も、他の問題でなるほど、と思うこともあるので、続けて確認してみてください。
類題1
まずは、上の問題とほとんど同じパターンで解くことができる問題です。
【解答】
n = 1 のとき、
a1 = 191 + (-1)0・21 = 21 = 3 × 7
n = 2 のとき、
a2 = 192 + (-1)1・25 = 361 – 32 = 329 = 7 × 47
より、 an のすべてを割り切る素数は 7 でしかあり得ない。
次に、「 7 は全ての an を割り切ること(※)」を証明する。
以下では、数学的帰納法で(※)を証明する。
(i) n = 1 のとき
a1 = 21 は 7 で割り切れる。
(ii) n = k のとき ak は 7 で割り切れると仮定すると、a を整数として、
19k + (-1)k-1・24k-3 = 7a …(a)
とおける。このとき、
(-1)k-1・24k-3 = 7a – 19k
となる。
n = k + 1 のとき、
ak+1
= 19k+1 + (-1)k・24(k+1)-3
= 19k+1 – (-1)k-1・24k-3 × 24
となるが、ここに(a)式よりを代入して、
ak+1 = 19k+1 – (7a – 19k) × 24
= 19・19k – 16 ( 7a – 19k )
= 35・19k – 7・16a
= 7a’ (a’ = 5・19k – 16a は整数)
となり、n = k + 1 のときも an は 7 で割り切れる。
(i),(ii)より数学的帰納法により(※)は示された。
以上より、題意を満たす素数は 7 である。
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