問題
10軒以上、50軒以内の家が並んでおり、1から順に番号がつけてある。
左右の端から順番に番号を足していったとき(すなわち、1から順に足していくのと、大きい方の数字から順に足していくとき)、合計がちょうど同じになる家があったとき、その家の番号を答えよ。
イズミの解答への道
普通の人の考え方なら、前から足したときと後ろから足したときの和が等しくなるように方程式を立てるのが筋だろう。そこで、不定の部分が2か所ある(家の合計と、何番目に番号が一致するかの両方が分からない)ため、不定方程式の解法を知っておく必要がある。
解答
n 軒( 10 ≦ n ≦ 50 )の家があったとして、k 番目で合計が等しくなったとする。すると、
を解けば良い。右辺は
であるから、もとの方程式を整理すると、
……①
となり、10 ≦ n ≦ 50 の範囲で右辺が平方数になる場合を考えればよい。
- , n + 1 がともに平方数となる場合
n が偶数であることが必要なので、 n + 1 は奇数。つまり、奇数の平方数を探せばよく、範囲を考えると、
n + 1 = 25 , 49
となる。すなわち、 n = 24 , 48 であるから、だが、これらは平方数ではないので不適。
- n , がともに平方数となる場合
が平方数であることから、平方数である n は奇数であることが必要条件。範囲を考えて、
n = 25 , 49
すなわち、であり、は題意を満たす。
以上より、 n = 49 のときに①を満たす整数 k , n が存在し、そのときの k は、
k2 = 49 × 25 = ( 7 × 5 )2
より k = 35 。
すなわち答えは、(家が49軒あるときで)おなじになる家の番号は 35番。
研究
ラマヌジャンの解法
この問題、今回は家の数が少なかったためになんとか解くことができたが、もっと大きいときにも解があるとして、それがいくつか求めよと言われたら、非常に手のかかる問題となる。
しかしラマヌジャンという数学者は、この問題をいとも簡単に解いたという。そこで、ここではラマヌジャンの考えたと言われている解法について考えてみよう。
問題の言い換え
式?を見直してみよう。右辺の形を見てすぐに「 1 から n の和だ」と思った人も多いだろう。
その通り、この式は、「 1 から n の和」がある数の2乗になることはあるか?という問題と同じである。 そこで、家がなんとやらという問題を忘れて、ここでは少しシンプルに(数論らしく)、
「1 から n の和が、ある数の2乗になることはあるか」
という問題を考えていこう。
ペル方程式
さあ、この難題を解きにかかってみよう。あとで k を別の意味で使いたいので、?式の k を m に置きかえておく。
解くべき問題は、
……?’
である。
ここでトリッキーな式変形をしよう。両辺に 8 をかけて整理すると、
8m2 = 4n2 + 4n = ( 2n + 1 )2 – 1
( 2n + 1 )2 – 2 (2m)2 = 1
となる。ここで、 x = 2n + 1 , y = 2m とおけば、
x2 – 2y2 = 1 …(b)
となる。一般に、x2 – Dy2 = 1 (D が平方数でない)の形の方程式のことをペル方程式という。
さて、もう少し深入りしてみよう。(b)式が成り立つときに、x2 は奇数なので x も奇数、x = 2p + 1 などと置いて整理することで、y2 が偶数でなければならないことも分かり、 y は偶数である。
すなわち、方程式(b)を満たす x , y (xは奇数、yは偶数)を求めれば、ここから逆算して、 n , m を求めることができる。
yが偶数であることをもとに少し計算してみると、以下の表のようになる。
(省略)
一番小さい解は、x = 3 , y = 2 であり、このとき n = 1 , m = 1 である。
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