「BOX」の作者が送る新作。前作「BOX」がものすごくよかったので、今回もタイトルで気に入って読みました。
まず、1ページ目に書いてある説明文にびっくり。「オオスズメバチについて」。前回の青春活劇から急変して、今度はスズメバチ?
しかしまあ、読み始めるとあっという間にその世界観に飲み込まれてしまいます。
1つ目は自然界の厳しさと自然の美しさ。喰う喰われるの世界で生きている主人公にとって、獲物を得ることは生きることに等しい。どんな残酷な状況でも、ただ生きるために、妹を育てるために獲物を取るという描写は、とても印象深い。同時に、美しい自然を思わせる描写も所々にあり、これがちょうどよい。
2つ目は、オオスズメバチの特徴ある一生について。他の虫に「メスなのに子孫を残さないなんておかしい」といわれて、困惑してしまう場面がある。オオスズメバチ特有のさまざまな性質について、うまく擬人化した感情を加えながら物語に織り交ぜていく様子は、とても上手に描かれていて、勉強になる。
雄大な自然のなかの物語でありながら、自然科学的に蜂の生態についての興味まで引き起こされてしまう、よい小説でした。